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横浜シネマリン代表 八幡温子さん

「映画は時代の先端を映し出して見せてくれる。

そんな仕事に関われていることが幸せだと思っています」

横浜で生まれ育った八幡さんにとって、映画はいつでも観られるものだった。ところが、結婚を機に移り住んだ茅ヶ崎では、駅前の名画座が閉館。市内に映画館が1つもない状況に遭遇し、愕然とする。そんな中、偶然見つけた映画サークルの上映会に足を運んだ八幡さんは、そのまま運営委員となり、サークル活動に没頭した。

「自分たちが良いと思った映画にたくさんのお客様が来てくださると、努力が認められた気がして。それが楽しかったのだと思います」

その後、家族の都合で横浜に戻った八幡さんは、横浜でも映画サークルを立ち上げた。

転機は突然やってきた。伊勢佐木町の映画館が閉館する、という情報が舞い込んだのだ。映画サークルで運営してはどうか、という話もあったが、八幡さんは個人で映画館の経営を引き継ぐことを決意。設備を一新してデジタル化をはかり、新装「横浜シネマリン」をオープンさせる。2014年12月のことだった。

「この3年間は『何が楽しくてやっているんだろう』というくらい大変でした。それでも、良い作品が取れて、たくさんのお客様が来てくださった時は本当に嬉しい。今後は『この映画館が好き』というお客様を増やしていきたいですね」

【profile】

横浜市保土ヶ谷区出身。印刷関係の仕事で培ったスキルを活かして映画サークルのチラシ制作を引き受け、宣伝活動に尽力。その経験と人脈を活用し、伊勢佐木町のミニシアター「横浜シネマリン」の経営を引き継ぐ。

「マニアックな作品が多いと言われることがありますが、見たことのないタイプの映画を提供できるのって、すごいと思いませんか」と八幡さん。映画館に足を運ぶ習慣のない若い世代をどう惹きつけるかが、現在の課題。

老朽化したビルの改装は予想外の大工事だったが、館内はロビーも広く快適になった。

映画のポスターに囲まれた階段を降りて行くだけでワクワクする。

デジタル化に対応するべく、設備機器を入れ替えるとともに、内装も全面リニューアル。全102席と改装前より席数は少なくなったが、スクリーンは一回り大きくなり、音響施設も一新されている。

 

《八幡温子さんインタビュー》

ずっと映画がお好きだったんですか?

映画は子供の頃から好きでしたが、マニアというほどではありません。私たちの世代にとって映画は身近な娯楽で、観たいと思ったらいつでも観られるものでした。そんな環境が恵まれたものだと気付いたのは、結婚して茅ヶ崎へ移り住んだときです。ちょうど駅前の名画座が閉館したところで、市内に映画館が1館もない時期でした。映画を観るためには、わざわざ横浜や本牧まで出かけなければならなくて、淋しいやら情けないやら(笑)。

そのうち、町の掲示板で映画サークルを見つけたんです。マルチェロ・マストロヤンニの『みんな元気』を上映するというので、「こんなおしゃれな映画を取り上げるサークルがあるんだな」と思い、さっそく出かけました。終映後に運営委員会に伺い、そのまま事務局の仕事を手伝うようになったんです。

映画サークルではどんな活動をしていたのでしょう

私は印刷関係の仕事経験があったので、宣伝用のチラシくらいならすぐに作れました。まずチラシ制作の仕事を一手に引き受け、そこからどんどんサークル活動にのめり込んでいったんです。

みんなで作品を選定し、みんなで宣伝し、月に1回の上映会をお客様でいっぱいにする。自分たちがいいと思った作品に、大勢の方が足を運んでくださるのが嬉しかったのだと思います。松井久子監督の『折り梅』を上映したときは、市内の介護施設をくまなく回ったところ、そこで働く職員さんたちが多数足を運んでくださいました。1日の上映で800人のお客様に来ていただくことができ、大きな達成感を得たことを覚えています。

茅ヶ崎で出会った映画サークルは、まさに私の原点ですね。

その後、横浜でも映画サークルを立ち上げました

横浜に戻ってきたのは親の介護のためでししたが、「これでまた映画三昧の日々が送れる」と思うと、ちょっと嬉しかったですね。ところが、またしても、横浜で単館系の映画館を5つ経営していた会社が倒産し、5館いっぺんに閉館するというタイミングでして…。会社と従業員さんが争議中で、映画サークルのようなカタチで映画館を再建しようとしていました。そこで、映画サークルを立ち上げるなら私もお手伝いしたいと思って仲間に加わり、その後「横浜キネマ倶楽部」として発足します。

横浜シネマリンの経営を引き継ぐことになったのは、どんなご縁から?

シネマリンの映写機メンテナンスを行っている方から声がかかったんです。当時、私はあちらこちらで「映画館を作りたい」と言って回っていたので、どこからかその話を聞きつけてくださったのでしょう。立地も良い映画館なので、「是非やらせてください!」と引き受けちゃったんです。

いざフタを開けてみると、劇場が入っているビルは築60を超えていたため、改修工事は予想をはるかに超える大工事となってしまうなど、困難の連続でした。

映画サークルで運営する、という選択肢もあったのでは?

もちろん、その話もありました。でも、興行の世界は、即決で大きなお金を動かすことが必要な状況が少なくありません。カリスマ性のあるリーダーがいるならともかく、その都度合議制で進めていくのは難しいと思い、私1人で暴走しました(笑)。

昨年末で3周年を迎えました。楽しかったこと、しんどかったことを聞かせてください

うーん、しんどいことばかりでしたね(笑)。映画サークルの運営と映画館経営は、まったく別物です。映画が好き、サークル活動が好き、くらいのノウハウでは太刀打ちできないことを、日々実感しています。

でも、昨年は1月の『小林正樹特集』で好スタートを切り、『牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件』が約2カ月のロングラン。ゴールデンウイークには『ラ・ラ・ランド』を上映しました。やはり、たくさんのお客様に来ていただけると、心から嬉しいと感じます。なかなか良い作品が取れなくて大変なことばかりですが、頑張った甲斐があったな、と。

今後の目標は?

スケジュールが埋まらないと「特集上映」を多めに組んでしまいがちです。特集を喜んでくださるお客様もいらっしゃいますが、もう少し新作をかけられる映画館に躍進したいと思っています。

また、娯楽が多様化し、映画を観るのはテレビですらなく、ネット配信や携帯で観る時代になりつつあります。そんな時代に育った若い人たちを映画館に引き戻すのは、並大抵のことではありません。「映画ファンを増やす」と大上段に構えるのではなく、「この映画館が好き」というお客様を増やすことを目指しています。まずは、ビルの地下にこんな素敵な空間が広がっていることを知っていただきたい。接客も含めて横浜シネマリンの独自色を打ち出し、「シネマリンっていいな」と思っていただけるよう頑張ります。

ミニシアター系の映画が観られる映画館。
102席の広々とした空間で、映画鑑賞が楽しめる。

  • ショップ・スポット名
    横浜シネマリン
  • 住所
    神奈川県横浜市中区長者町6-95
  • 電話
    045-341-3180
  • 平均利用額
    1,800円
  • 総座数
    102席

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