不思議に静かな時間が流れる空間
昭和8年創業
横浜の音楽シーンを牽引する老舗ジャズ喫茶
【ジャズ喫茶ちぐさ】
レコードやオーディオが高級品だった時代。町にはコーヒー一杯で好きなだけレコードを聴かせてくれる喫茶店がありました。「ちぐさ」はその先駆けといえる存在です。ジャズと聞くと、難解で敷居が高いイメージがありますが、「ちぐさ」は開放した窓から音楽が溢れている日もあったので、思い切って足を踏み入れてみました。
コーヒーを注文して席に着くと、正面には巨大なスピーカーがドーン!
壁際のラックには膨大なレコードコレクションがずらり。
なんとも緊張感のあるシチュエーションですが、周囲を見回すと、皆さんリラックスして音楽を楽しんでいらっしゃるご様子。ジャズもオーディオも詳しいわけではないけれど、アナログならではの温かみのある音が心地よくて、たっぷり1時間ほど聞き入ってしまいました。
昭和8年に創業した「ちぐさ」は、第2時世界大戦前、日本ジャズの黎明期からモダンジャズ全盛の1960年代、そして現在まで続いている最古のジャズ喫茶のひとつ。
創業者である吉田衛さんは、ジャズ喫茶のオーナーとしてだけでなく、企画立案・後見人として横浜の音楽シーンにも深く関わって来た方です。世界のジャスシーンで活躍する秋吉敏子さん、日野皓正さん、渡辺貞夫さんなどが足繁く通い、ジャズに酔いしれたというのは有名な話。
平成6年に吉田さんが亡くなった後、地域の再開発もあり、お店の歴史は一度幕を下ろします。けれど平成24年、店の場所に移転し、野毛の町と常連客の有志によって営業を再開。現在はNPOとして運営されています。
お店で使用しているイスやテーブル、灰皿、看板なども、すべて有志の手で保管されていたものだとか。オリジナル製作のオーディオ機器は、移転に合わせて設計者監修のもとでメンテナンスを行い、現役続行中。歴史の重みを感じます。
かつて「ちぐさ」があった場所に埋められた、横浜焼きのプレート。野毛の人々とジャズへの愛が詰まっています。現在はマンションが建っていますが、プレートは誰でも見られる場所にあるので、ぜひ探してみてください。