伊藤博文が風光明媚な景色を好んで建てた別荘「旧伊藤博文金沢別邸」
アートな空間に潜入!
YOKOHAMA ART SPOT FILE
伊藤博文に関する資料や調度品などを多く展示
旧伊藤博文金沢別邸
野島公園内にある旧伊藤博文金沢別邸は、初代内閣総理大臣であり、大日本帝国憲法を起草するなど、立憲政治の黎明期に大きな役割を果たした伊藤博文により、明治31年(1898年)に建てられた茅葺寄棟屋根の田舎風海浜別荘建築です。伊藤博文が、風光明媚で、故郷の山口にも似ている金沢の地を好んで建てたといわれ、大正天皇や韓国皇太子なども訪れました。
平成18年(2006年)11月には、横浜指定有形文化財に指定されましたが、建物の老朽化が著しかったことから、平成19年(2007年)解体工事・調査を行い、現存しない部分を含め、創建時の姿に復元することになりました。
邸内では、伊藤博文に関する資料や調度品などを多く展示。展示品により、博文公の功績や人となりを改めて知ることができます。
玄関正面
外観
建物は、客間棟、居間棟、台所棟の3棟からなり、格式の高い客間を海側の眺望のよい位置に張り出し、ほかの棟を廊下でつなぐ雁行(がんこう)という配置になっています。
[客間棟(格式高い客室)]
客間棟は、天皇、皇太子をはじめ、皇族が来邸した際に使用されました。
畳敷きの廊下
壁には、年譜や史実などを展示。
客用便所
本漆仕上の木製大便器(小便器も本漆仕上)
中は板敷で、手を洗う水屋は畳敷き。博文公が使った便所は私的スペースの居間棟にあり、便器は木製の質素な作り。
晴嵐(せいらん)の間
客間棟のガラス戸の板ガラスは、創建当時日本では生産できなかったため、ベルギーから船で運ばれたもの。今でも手吹きらしいゆがみや気泡の入った部分が見られます。
鳳凰の彫刻がされた、創建当時から伝わる板欄間。
帰帆(きはん)の間
建物周辺には、至る所に明治期の松が植えられています。ずっと眺めていたいと思うほど、穏やかで美しい景色です。
伊藤博文自筆の書
※過去取材時に撮影 邸内展示品の入れ替わり有
床の間に置かれた金屏風は、伊藤博文が金沢の地で書いたもの。「春畝(しゅんぼ)」は博文の号。蓮を君子の花と例えた内容は、国に至誠を貫く伊藤博文の気持ちが込められています。
[居間棟(博文公の書斎・寝室等私的スペース)]
居間の名前は、歌川広重の浮世絵「金沢絵(金沢八景)」から取られました。
秋月(しゅうげつ)の間
夕照(せきしょう)の間を見る
「秋月の間」は、「瀬戸秋月(せとのしゅうげつ)」より
「夕照の間」は、「野島夕照(のじまのせきしょう)」より
湯殿
来邸した客人も入った、サワラ材の木製箱風呂。
邸内・庭園では季節に合わせイベントも開催!
五節句にはそれぞれの飾りを展示
桃の節句に合わせ、100年以上前に作られた雛人形の他、コーディネーターによる桃の節句のしつらえも展示。
お供え物も、当時のもの。
※展示は2021年3月21日(日)まで
桃の節句膳
貝合わせ
他にも、茅葺屋根の燻蒸の様子を建物外から見学したり、庭園でヨガを楽しめるイベントなどの開催あり。
牡丹園
毎年4月中旬~5月上旬頃には、隣接する牡丹園に約50種・約200株の「牡丹」が咲き誇ります。(「牡丹」は金沢の花)
開花に併せて、「ぼたんまつり」を開催。(2021年は、4月10日(土)~4月25日(日)に開催予定)
庭園に咲く「牡丹」 ※画像はイメージ 旧伊藤博文金沢別邸 提供
※建物には、受付にて新型コロナウイルス対策のチェック表に記入してから入館。
旧伊藤博文金沢別邸の、日本の心を思い出させてくれるような建物と展示を、美しい景色とともに楽しんではいかがでしょうか。