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Lifestyle
2021.03.19

Bespokeshoes & Shoemaking school 木佐木 愛

 

自分らしさが表れるから面白い
世界に一つしかない“宛先のある靴”

 

木佐木さんがフルオーダーメイドの「ビスポークシューズ」の道に入ったのは、ほんの偶然でした。

「大学卒業前に旅行で訪れたヨーロッパの博物館で手縫いの靴を目にして『靴って自分の手で作れるんだ』ということを知り、惹きつけられたんです。もともと“手の内でできること”を仕事にしたいという思いがあったので、帰国後はすぐに靴作りを学ぶ学校を探し、飛び込みました」

靴にはいろんな製法があること、作る技術とは別に「足に合わせる技術」があることなど、学ぶほどに「次に学ぶべきこと」が見えてくるため、結局、会社勤めをしながら9年ほど修行生活を送ったそうです。そして2012年春に独立。オーダー靴と靴の教室「kisakishoes」をオープンしました。

「ハンドソーンウェルテッド製法は全200工程近くあると言われています。その工程を一つひとつ積み重ねていった結果として一足の靴が出来上がるので、同じデザイン・同じ型紙で作っても、作る人が変わればまったく同じモノにはなりません。どこか自分が出てしまう部分もあって、そこが面白いですね」

1足の靴が完成するまでには5〜6カ月はかかるそうです。

「膨大な時間をかけて手作りすることの意味は、世界に1つしかない、その人に合わせた“宛先のある靴”を作れることだと思っています。はき心地やデザインなど、その人のこだわりに応えられるのは“手仕事”ならではで、それが私のやりたかったことなんです」

まず片足分の木型を作り、それを左右反転させたものを製作。左右の違いを補正した上で1足分の木型が完成。

木型を元に型紙を起こし「アッパー」を縫製。

様々な道具が並ぶ室内は、まさに「職人の工房」。

 

【profile】
■木佐木 愛

mogeworkshop専門科で学んだ後、benchworkstudyにて大川バセット由紀子に師事。アシスタントを経て2012年に独立。

 

《木佐木愛さんインタビュー》

靴づくりを始めたきっかけは?

大学時代にヨーロッパを旅行した際、博物館で手縫いの靴を目にしたことでしょうか。もともと靴が好きだったので、それを自分の手で作れるのなら作ってみたい、と思ったんです。そういえば以前、雑誌で“手作り靴”の記事を見かけて取っておいたな、と思い出し、探し出して電話してみたら「学校がある」というので入学しました。
学ぶうちに、靴にはいろんな製法があり、オーダー靴の場合「作る技術」と「足に合わせる技術」の両方が必要で、その関係性は製法によっても違ってくる、ということに気づきます。イギリスの専門学校で学ぶことも考えましたが、そのためには英語の勉強からはじめなくてはならないので断念。これは長期戦だな、もっと勉強しなくてはオーダー靴にたどり着けないな、と思いはじめた頃、その後師匠になる方が海外から帰国されたので、その人の元で学び始めました。
今から振り返ると、なんのためらいも不安もなく決めてしまった自分に対して「何を考えていたんだろう」と思っちゃいますよね(笑)。

手作り靴の良さとは?

私は“手縫い至上主義”ではありません。ただ、手縫いだからこそできる耐久性やフィッティングの良さは確実にあります。革底の靴はハンドソーンウェルテッド製法の特徴ではありますが、製法の良さを取り入れつつ、お客様のライフスタイルに合わせてゴム底仕様の靴を作ることも可能です。オーダー靴=革底のカチッとした靴、という発想にとらわれず、カジュアル志向の方にも挑戦していだきたいですね。
大切なのは、自分の足に合った靴を履いて、足の筋肉をきちんと使って正しく歩くことです。早くからその習慣を付けておけば、将来の悩みは大幅に減ると思います。もちろん、靴はファッションの一つなので、例えば女性ならデザイン優先のハイヒールを履きたい日もあるでしょう。だから、毎日じゃなくていいんです。自分にピッタリ合った靴を常に1足持っておいて、きちんと歩く感覚を忘れないことが大切だと思います。
そのためにお勧めしたいのが、早いうちに自分の足の木型を作っておくことです。足の骨格は、大人になればほぼ変わることがないので、年齢を重ねたり多少の体重の変化があっても、微修正を加える程度で対応できます。高額だと思う方も多いようですが、木型は“一生もの”です。「一生に一度オーダー靴を」と言う方もいらっしゃいますが、せっかく木型を作ったのに1足しか作らないなんてもったいない話ですよ。いっそ「二十歳の記念に自分の足の木型を作りましょう」というキャンペーンがあったらいいな、と思っています(笑)。

靴作りの面白さとは?

靴作りって、すごく自分が出るんです。ハンドソーンウェルテッド製法は全200工程近くあると言われており、一つひとつの選択が蓄積されて1足の靴が出来上がります。一つひとつの工程をきちんと積み上げていけば「ちゃんとした靴」が作れますが、その「ちゃんと」が人によって違うのが面白さだと思っています。例えば「鉛筆の線1本分の違いのどちらを選ぶか」というレベルの小さなジャッジの積み重ねがあって、どこかの工程で「ま、いっか」とジャッジした場合はそういった靴が出来上がる。靴を作ることで自分を知ることが出来たり、そこから学ぶことがあったりして、「自分にはこんな面があったんだ」という気づきがあって……なんだか人生修行みたいですね(笑)。

工房では教室も開いていらっしゃいます

昔ながらの手縫い靴が好きでその製法を学びたい、というのは男性に多い気がします。女性は“手作り”が好きな人や、「自分に合う靴が見つからないから自分で作ろう」という方が多いかな。自分でデザイン画を描いてきて「これが作りたいんです」という方もいらっしゃいます。決まったカリキュラムはないので、可能な範囲内で一緒に考え、作りたい靴を作れるよう指導します。
1足作るのに1年ほどかかりますが、2〜3足作るとピッチが上がってきますね。手縫い製法は畳1枚ほどのスペースがあればできるので、ある程度出来るようになれば自宅で作業することも可能です。希望する方にはナイフの研ぎ方など道具の手入れから指導しますので、興味のある方は挑戦してみませんか。

 

 

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