ボクノワタシノ オーナー 佐藤いよこさん
料理は得意じゃないけど、食卓をおしゃれに彩ってみたい。そんな思いに応えてくれるお店を、元町の裏通りで見つけた。ぬくもり感のある使い勝手の良さそうな和食器は、今日買って帰れば毎日活躍してくれそうなものばかり。個性を主張し過ぎないので、手持ちの器と並んでも違和感がなさそうだ。
「食べることは生きることの基本。だからこそ、いつでもおいしく、楽しく食べたいですよね。食器はそれをサポートするものだと思っています」
そう語るオーナーの佐藤さんのブログには、おいしそうな食卓の写真が並んでいる。さぞかし料理上手なのかと思いきや、さにあらず。
「お店をオープンする前は、ごく普通の勤め人として日々忙しく過ごしていたので、自宅でゆっくり食事をすることはほとんどありませんでした。その分、食べ歩きにはずいぶん投資をしたので、美しくおいしそうな盛り付けは、そこから学んだのだと思います(笑)」
【profile】
ボクノワタシノ
横浜市中区山手町52-7
TEL.045−681−3288
営業時間:11:00〜17:00
定休日:毎週月・火 ※祝日の場合は営業、翌日振替休日
https://www.bokunowatashino.com/
居心地の良い店内には、天然木の家具に器たちがゆったりとディスプレイされている。「料理の味わいは器ひとつで変わります。私は食いしん坊だからおいしく食べたいんです(笑)」と、佐藤さん。
店頭には常時10人ほどの作家や窯元の器が並ぶ。肉じゃがが映えるお皿は? それに合う小鉢は? 迷った時は、食空間コーディネーターの資格を持つ佐藤さんに相談してみて。
佐藤さんのブログにはおいしそうな写真が並ぶ。焼き魚や目玉焼きなど当たり前の料理がとってもおいしそうに見えるのは、器のマジックかも。
《佐藤いよこさんインタビュー》
陶器のモノコト屋「ボクノワタシノ」をはじめたきっかけは?
もともと器が好きで、陶芸教室にも通っていましたが、まさか自分でお店を開くとは思ってもいませんでした。きっかけは、30年間勤めた大手化粧品メーカーで、管理職を対象とした早期退職者の募集があったことです。このまま働き続けた場合の自分の立ち位置を考えてみたら、見つけることができなくて。そういえば陶芸教室の先生が若い作家たちの作品を売る場所を探していたな、その場所を私が作ってみようかな、という思いが膨らんだので、会社を辞めてお店の開店準備に入りました。
すぐにこの場所でお店を?
いえいえ。売り場としての“お店づくり”は会社員時代の経験がありましたが、陶器の扱いや流通についてはまったくの素人です。まずは半年ほどかけて焼き物の産地を歩き、先生に紹介していただいた陶器の卸問屋にも“修行”に行きました。その上で“販売する練習”としてオンラインショップをオープンしたのが2014年のことです。いろいろ工夫を凝らし、1年後にはレビューで高い評価をいただけるようになったんですよ。
でも、一人で黙々とパソコンに向かっている仕事は孤独だったので「はやくお店をやりたい」という気持ちが高まり、横浜でお店をオープンするに至りました。
ブログで公開している、お店の器を使った料理写真が評判です。料理上手なんですね
とんでもない。陶器の販売については未経験だし、人脈があるわけでもないので、陶器の良さや楽しさを伝えるためには他のお店と違うことをやらなければ、と考えただけです(笑)。勤め人時代は仕事が忙しかったので、料理をするといっても“手抜き”ばかり。ブログの写真がおいしそうにみえるとしたら、職場の仲間や友達とあちこち食べ歩いた経験がいきているのだと思います。
実際、料理のおいしさは器で変わると思っています。せっかく食べるならおいしく食べたいし、器はそのためにあるといっても過言ではありません。新しい服を買ったらお出かけしたくなるように、新しい器を買うと料理のモチベーションも上がりますよ。
今後やってみたいことがあればお聞かせください
料理の盛り付けがうまくできないと言う方、けっこう多いですよね。アドバイスを差し上げると「センスよね」と言われることもありますが、ちょっとした“ルール”をお伝えしているだけで、そんなに難しいことではないんです。そんな“モノ”ではない“スキル”をお客様と一緒に学べる方法がないか、考えています。
でもその前に。最近、食べ歩きをしていないので、自分自身のスキルアップのためにもおいしいものを食べに行かなくちゃ、と思っています(笑)。