近沢レース店
美しく優雅な伝統を継承しつつ
時代に合わせて進化するレースの世界
まぶしい夏の日差しに映えるパラソル、そっと汗を拭くレースのハンカチ。そんな幻想的な世界に浸ってみたくて、元町にある近沢レース店に足を運んでみた。
店長の野江香織さんによると、近沢レース店の創業は明治34年。元町本店の原点は、主に居留地に暮らす外国人をお客様とするリネンストアだったという。テーブルクロスやシーツなどをオーダーメイドで仕立てる際、その装飾としてレースを使ったところ、これが評判を呼び今日に至っている。
「16世紀頃のヨーロッパで発達したレースは、かつてはダイヤモンドと同じくらい高価だったそうです。驚くほど繊細で、現在では作ることができないため、アンティークとして大切に受け継がれています」
レースは高級品でお手入れが大変、というイメージを持つ人は少なくないが、現代のレースは、ポリエステルなども使うことで繊細な美しさと丈夫さを両立。タオルハンカチやエコバッグのような、優雅さと実用的を兼ね備えた商品が次々と生まれている。その一方で、トルコのジャカード生地にベトナムのレースを合わせるなど、近沢レース店ならではの優雅な世界からも目が離せない。自分へのご褒美として、お気に入りの一点を選んでみたいと思った。
【profile】
■近沢レース店 元町本店
明治34年創業。現在は魅力的なレースや素材を世界各地から集め、横浜らしさを加えたオリジナル商品を手がけている。
横浜市中区元町3−119
TEL.045(641)3222
ドイツ製の機械織りレースは、繊細な美しさと洗濯などにも強い堅牢さを併せ持つ。価格も手頃なので、贈り物としても人気。
18〜19世紀に作られたアンティークレースは、極細の綿糸で作られたため、時間とともに失われてゆく。そこで、ショールなどに使われていたレースから状態の良い部分だけを使い、ジュエリーに仕立てている。
美しく立体的なレースをあしらったタオルハンカチは、色、レースデザインともに多彩にラインナップ。元町本店限定のロゴ入りは、横浜土産としてもおすすめ。
日傘やバッグは夏の定番。透け感のあるバッグなどトレンド感のあるデザインも豊富。
《元町本店店長 野江香織さんインタビュー》
「レース」とは、そもそもどんなもの?
「レース」の語源は、糸、ロープ、縄等で輪郭をとった穴という意味を持つ、ラテン語の「ラク(Laqueue)」、古代フランス語の「ラシ(Lassis or Lacis)」と言われています。
イタリアのルネッサンス期に大いに発展し、16世紀後半には女性のたしなみとされるまでに普及したようです。18世紀に入って上流階級の衣服を飾るようになったことは、マリー・アントワネットの肖像画などを見てもわかります。
レースは繊細で扱いが難しい、という印象があります
もちろん繊細なレースもありますが、近年のレースは、ポリエステル、レーヨンなどを使用したものも多いので、普通に洗濯機で洗えるものも少なくありません。ドイツの機械織りレースは繊細な美しさと丈夫さを併せ持っているので、気軽にお使いいただけますよ。
ちなみに、オールレースの「レースエコバッグ」を提案したところ、大変ご好評をいただいています。エコバッグというとカジュアルなものが多い中、こちらはエレガントな総レース。コンパクトに折りたためることはもちろん、軽くて丈夫です。
日傘にもよく使われるし、必ずしもデリケートではないのですね
確かに、レースのバラソルはとても優雅なイメージがありますが、生地の麻は風通しがいいので熱気がこもらず、涼しく実用的な面もあるんです。素材も多様化していますし、とても身近なものになってきていると思います。
現在、生産の中心となっている国や地域とは?
ヨーロッパでは伝統的なベルギー、精巧な機械レースの技術に優れたドイツなど。アジアでは、手工芸を得意とする中国、ベトナムなどが知られています。
近沢レース店では、スタッフが世界中を回って生地やレースのサンプルをピックアップし、それを元に社内デザイナーがオリジナル商品を開発しています。日本と世界の職人たちの手仕事を繋げることで、美しく使いやすい商品が生まれているのです。
今年の夏のトレンドは?
透け感のあるバッグが流行っているので、シースルー素材にレースをあしらったものを作ってみました。好評なので、mireaが発行になる頃まで店頭に残っているといいのですが(笑)。
また、ここ数年はタオルハンカチが人気です。色・柄ともに多彩で、価格も手ごろなので、ちょっとしたプレゼントにもご活用いただけます。