極上のフグちりと、野毛のあったかい人情をたっぷりどうぞ
81年続くフグ料理の老舗・福家。三代目主人の酒井芳隆さんは野毛生まれ・野毛育ちで、生粋のハマっ子だ。「野毛の変わらない良さは、世話好きってことでしょね。一歩踏み込めば、あったかい雰囲気になるんですよ。線路の反対側のみなとみらいは近未来的な街で、例えればメタリックな感じ。それに比べて野毛は、木のようなぬくもりがある街ですね」。
福家で扱うのは、フグの王様と言われるトラフグと、もう少しリーズナブルな価格で食べられる正才。フグちりで食す時は、しゃぶしゃぶの要領で10秒ほど出汁にくぐらせればOK。淡白でありながら旨味が凝縮された、フグならではの味わいが口いっぱいに広がる。福家では、出汁をとるために入れるガラはトラフグを使用。酒井さんによれば「旨味の本質は骨の周りにある」というから、人目を気にせず骨までしゃぶり尽くしてほしい!フグはコラーゲンたっぷりだから、残さずにどうぞ。
また、入荷するトラフグは活き〆されたもので、尻尾のあたりを強く押すとビクン!と反応が。フグ刺しで食べるには、〆てすぐではなく35時間ほどおいてからのほうがおいしいという。
フグちりでは、フグ以外の食材にもこだわっている福家。野毛の豆腐屋から仕入れる豆腐は温めすぎず、外はほんのり温かく、中は冷たいぐらいで食べるのがオススメ。春菊もサッと出汁に通すだけで食べると、驚くほどアクが少なく苦味がない。
さらに、ポン酢は自家製。橙を数十年使い続けているジューサーで絞って、ていねいに仕上げていく。酸味がほどよく、フグの味を引き立ててくれる福家の隠れた主役といえそうだ。