mirea 街を彩る ヒト・モノ・コトをつなぐ[ミレア]

横浜イングリッシュガーデン スーパーバイザー河合伸志さん

横浜を花緑があふれる
美しい街にしていきたい

豪華絢爛たるバラが春〜晩秋にかけて楽しめる「横浜イングリッシュガーデン」。スーパーバイザーを務める河合伸志さんは3年前からこのガーデンのプランニングを手がけ、英国式庭園として完成された現在の形を作り上げた。「以前は植物の生育が悪く、シーズンになっても花が咲いていないこともありました。その庭を変えるためにしたことは、まず土づくりをすること。そして横浜の風土にあった植物を選ぶこと。庭づくりは気候に影響されますので、なかなか100点満点とはいきませんが、だいぶ見応えのある庭になってきたと思います。特に薄霜が降りるこれからの時期はバラの色が深くなり、花もふっくら大きくなりますので、ぜひご覧いただきたいですね」。
平成29年3月から開催される「全国都市緑化よこはまフェア」では実行委員会のアドバイザーを委託された河合さん。「このフェアを機に花や緑に意識を向けていただいて、美しい街づくりのひとつのモデルを作っていけたらと思っています」。

photo gallery
華やかに咲き乱れる春のバラのアーチは一見の価値あり!3年かかってようやく今の形ができたという。(2015.5撮影)

河合さんが作り出した「マリー・キュリーIYC2011」。キュリー夫人のノーベル化学賞受賞100周年の国際化学年に、孫のエレーヌ博士によって命名。

街中にこんなに本格的な英国式庭園があることに驚かされる。一年を通じて楽しめ、散策にもってこいのスポットだ。

剪定や除草など庭仕事に欠かせない道具たち。いつも美しい草花が楽しめるのは、ガーデナーたちの日々の手入れがあってこそ。

河合伸志さんインタビュー

現在、スーパーバイザーとしてご活躍なさっておられますが、横浜イングリッシュガーデンにはもともとガーデナーとして入られたのでしょうか?
「いいえ、そうではありません。前に勤めていた会社のころからのお付き合いなのですが、その当時のガーデン(現横浜イングリッシュガーデンの前身)は評判が非常に悪く、そこで、ガーデン側から『何が悪いのか分からないから、一度見てほしい』と頼まれたのがきっかけで、ご縁が始まりました。」

今とは全然違う状態だったのでしょうか?
「今ではまったく当時の面影はないですね。建物や構造物は今と同じなのですが、植物がぜんぜん育っていなくて、季節になっても花が咲いていないとか…。お客さまからすると、かなりの期待はずれという状況でした。」

どんなふうに直していこうと思われましたか?
「問題点は大きく二つありました。一つは、植物を育てるためには土作りが大切なのですが、その基本が全くできていないこと。そしてもう一つは、横浜の土地・気候にあった植物が選ばれていないということでした。英国式庭園といっても、横浜はイギリスのように涼しくはないのですから、蒸し暑い環境で耐えていける植物を選ばなくてはいけないのです。」

そもそもバラの種類というのは、どれぐらいあるものなのでしょうか?
「正確な数字は誰にも分からないです。『アメリカばら会』という愛好者団体が世界中のバラ品種のデータ登録の窓口なのですが、そこに登録されているもので全てではなく、品種として存在するものの登録がなされていないもの、登録されたもののすでに消滅してしまったもの、実は同じ品種なのに別の名称で呼ばれていてデータ上では別品種扱いされているものなど、実に様々で、正確な数字を把握するのが難しい状況です。しかし、少なくとも数万品種はあると思われます。」

そんなにあるのですか!
お庭を直し始めた当初は、植物は全部入れ替えられたのですか?

「横浜の気候に合わないものは入れ替えをし、問題のない植物はそのまま再利用しました。横浜イングリッシュガーデンは、奥の広めの庭と手前の4つの庭があるのですが、手前の4つは3月半ばから直し始めまして、5月のゴールデンウィークまでに土作りも含めリニューアルを終わらせました。残りの奥の庭は、夏の間に再整備しました。」

小さな苗を植えて、5月に咲くように調節されたのですか?
「そうですね。植え付け直後でも花は咲くには咲きますが、見応えがなく、本来の庭の姿ができ上がってきたのは1年以上経ってからですね。今年で3年ほどになりますが、当初の姿からは考えられないくらい沢山の花が咲くようになりました。」

現在の庭の姿は、河合さんのイメージどおりですか?
「できているところもあるし、こんなはずじゃなかったけど・・・まぁいいかというところもあります(笑)。植物の仕事って完璧なる完成がない仕事だと思っていて、今まで100点の出来って正直ないです。今年こそ100点を!と思ってやっていますが、なかなかできないですね。気候にも大きく左右されますし。」

現在、庭に植えてあるお花について教えていただけますでしょうか?
「そもそも英国式庭園ではバラは重要なアイテムなのですが、横浜市の花はバラということもあって、この庭はバラを中心に作られています。また、バラは国内でもトップの人気を誇る花で、多くの方がバラを見たいと思っていることも選んだ理由になります。そこでバラを主役にして、それに合わせて脇役の植物達を決めていきました。」

ガーデン内には何種類ぐらいのバラが咲いていますか?
「約1,300品種ほどあります。春は全種類咲きますね。」

秋バラというのも耳にしますが、年に2回咲く種類もあるのですか?
「品種によっては年に4〜5回咲くものもあります。5月がピークなのですが、そのあとに2番花といって6月後半ごろもう一度咲いて、7、8月も咲いている品種もあります。気温が涼しい時期のほうが花色の発色が良く、花のサイズも大きくなるので、春と秋のバラが一際美しいですね。」

河合さんはプランナーとして、「次のシーズンはこんなふうにしていこう」ということをご提案されるのですか?
「はい、そうですね。特に草花は1年ごとに入れ替えていますので、来年はこんな花を使ってみようかとか、好評だったらまた翌年も使ってみようかとか、最新の種類を導入するなど、その時々によって少しずつ変えています」

お天気の影響も大きいと思いますが、やはり3ヶ月予報などはチェックなさっているのですか?
「もちろんです!天気はすごく気にしています。ガーデンの仕事をする上で『今日の天気はどうだったっけ?』と訊くような態勢ではダメなのです。(笑)特に台風シーズンは敏感になります。最終的には天気にはかなわないのですが、可能な限りケアすることで被害を最小限に食い止めることは、ガーデナーとしては努力しなくてはいけないことだと思っています。」

雨が降ってきそうだと早く気づくとか、天気の変化に敏感になりますか?
「そうですね。僕の知り合いは話している最中でも気温が変わってきたことに敏感に気付きます。『気温が下がってきたから、ビニールハウス閉めてくる』とか・・・。職業上、そういうセンサーのような感覚が身に付くことは大切です。」

研ぎすまされていくのですね。
「そうでないとできない仕事ですね。」

園芸、そしてバラとの出会い
続いて、プロフィール的なお話を伺いたいのですが、そもそも花は小さなころからお好きだったのでしょうか?
「子どものころから環境には恵まれていたと思います。自宅に庭がありましたし、祖父母の家にも広い庭があり、バラや様々な花が植えられていました。休みの日にはそこで手入れをするのが日常でしたし、自ずと花を好きになっていきました。」

大学院は園芸学研究科を修了なさっていますけれども、進路を選んだ高校生のころには「園芸を仕事にしていきたい」という思いがあったのでしょうか?
「うーん、そこまで思っていたかはわからないですが、やりたいことをやってきた結果、今にたどりついたという感じですね。ただ、親には生活していけるのかと反対されました。園芸は人間が生きていく上で必ず必要なものではないですし、ある意味ぜいたくなものですから、世の中が不安定になれば切り捨てられるのではないかとも言われました。もっと人の生活に根ざした職業についてほしいという思いが、親にはあったようです。」

でも、河合さんご自身の中には「やりたい!」という強い気持ちが?
「そうですね。やはりその気持ちは捨てきれなかったですね。」

子どものころから植物が好きで、中学・高校とずっとその気持ちが続いていたのですね?
「そうですね。植物はずっと幼い頃から好きでした。中でも小学校の時に『ブルームーン』という薄紫色のバラを見てから、特にバラに対しての思いが強くなりました。とてもキレイだと思いましたし、香りもよかったので、強く惹かれました。他のバラとは違ってみえて、感動しました。
実は僕、園芸が好きなことを人に話すのがイヤだったのですよ。年寄りの趣味みたいな印象もあったし、ピアノと同じで花が好きなのは女の子っぽいイメージもあったので、友達には一切言わなかったです。(笑)大学に入って、周りに同じような友達ができて、ようやく話すようになりました。それまでは、本当にひた隠しにしていました。(笑)」

そうだったのですか!花を育てるということに加えて、庭を作るということにも学生時代から興味がおありだったのですか?
「花を育てることが好きな人は、時として庭は栽培圃場になってしまい、限られたスペースでいかに沢山の植物を栽培するかを必死に考えたりするのです。(笑)僕もまさに最初はそうでした。僕がなぜ庭に目覚めたとかというと、就職したのち長野県にいた時期があり、その時にいろいろな庭園を見る機会があり、ただ単に植物を育てるだけでなく、植物の組み合わせを考えることによって、1+1が2ではなくて3にも4にもなり、植物の美しさが引き出されることに気がついたのです。庭というものの考え方が、変わっていったのですね。植物が好きで、植物の美しさを知っているからこそ、植物が美しく見える庭を作りたくなっていきました。
多くの造園家にとって、植物というのは庭を造る1つの『材料』にすぎないことが多く、中には植物が無い庭もあるのですが、僕にとってそういう庭は庭ではないのです。もし庭が舞台だとしたら、僕の中では植物はそこに立つ女優で、女優のいない舞台は存在しないのです。一般に庭をつくる人は舞台(庭)の内容に合わせて女優(植物)を選びますが、僕はそこがまるっきり違います。魅力的な女優がいると、その女優が輝くその女優のための舞台を作りたくなるのです。」

ご自分の美意識をカタチにできる一つの場が、横浜イングリッシュガーデンなのですね?
「そうですね、ある程度実践できた場ではあるのかなと。ただし、ここは趣味の庭ではなくあくまでビジネスの庭です。多くの人が求める姿は常に意識していて、それに視点を合わせています。ですので、自分の好みはこうだけど・・・ということもありますし、また、時々によって自分の好みの植物も変わっていきますので、完成した形になるということないですね。」

常に新しい女優を探し求めると(笑)?
「こんな女優がいたのか!今度は、この女優で舞台を作ってみたい!と(笑)。チャンスがあったら別の場所で、イングリッシュガーデンとは全く違うスタイルの庭を作ってみたいという気持ちもあります。例えばもっと静かでナチュラルな庭とか、和の印象の庭とか。」

新しい女優さん(バラ)をご自分でも作られているのですよね?
「庭の仕事をしていると、こういう女優(バラ)がいたらいいなぁ・・・というイメージが頭の中に浮かんでくるのです。そして、実在しないならばそれを自分で作りだそうと。バラの中にはすごく色々なタイプがいて、美人で映えるのですが性格上難がある(笑)とか、健康的でなくすぐに寝込んでしまうもの、見た目はイマイチなのですが、健康的で性格が良い(笑)ものなど。ガーデンは一年中営業していますので、なるべく安定的に調子がよく、かつそれでいて美しいものを求めていきたいですね。特に最近は暑さが厳しくなってきているので、暑さに強いというのも重要になってきています。」

最後になりますが、今後お考えのプランなどはありますか?
「僕が横浜の街中で感じるのは、花や緑がまだまだ足りないということです。背景に六甲山があるという立地もありますが、同じ港町の神戸は緑が多く、三宮の街角にある花壇や寄せ植えはすごくオシャレで、街に花をうまく取り入れているのです。横浜も神戸に負けないようにしたいですね。平成29年に予定されている『全国都市緑化よこはまフェア』を機に市民にも花や緑に意識を向けていただいて、美しい街づくりの一つのモデルを作っていけたらいいなと思っています。そのための知識や情報を、このガーデンからもどんどん発信していきたいですね。
植物の良さは、季節の移ろいを感じられることだと思います。時間がある時にフラッと散歩がてら横浜イングリッシュガーデンに足を運んでいただけると嬉しいです。『すすきの穂が出てきたな、もう秋だな』とか『木の芽が膨らんできたな、春だな』とかそれぞれで季節の変化を見つけてもらえたらいいですね。花緑のある生活の良さを、ぜひ多くの人に知っていただきたいです。」

取材・撮影協力:横浜イングリッシュガーデン

横浜イングリッシュガーデン

横浜市の花でもある「バラ」。このガーデンでは、約1,200種のバラを中心に、横浜の気候風土にあった植物を楽しむことができる。

  • ショップ・スポット名
    横浜イングリッシュガーデン
  • 住所
    横浜市西区西平沼町6-1 tvk ecom park
  • 電話
    045-326-3670
  • 営業時間
    10:00〜6:00 (最終入園 閉園より30分前) ※自然美を尊重するため外灯がなく、冬季は安全を考慮し日没までの営業。

マップ

関連記事

  • 一緒に見て、触れて! 体感ミュージアムで自然の神秘に触れよう

  • 躍進を続ける歌舞伎の若手俳優・尾上松也さんが登場!

  • 地産地消の新しいカタチ「神奈川食べる通信」

  • アートな感性と英語力を同時に磨ける場所がある!!