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今注目の尺八演奏家、藤原道山さんにインタビュー!

ヨコハマ・アートナビ★巻頭インタビュー
ART×PEOPLE

藤原道山
DOZAN FUJIWARA

ヨコハマ・アートナビ2015-16冬号の巻頭インタビューにご登場いただいた今回のアートなヒトは、いま演奏会やTVなどで引っ張りだこの尺八演奏家、藤原道山さん。きっとあなたのなかの邦楽のイメージが変わる、そんな素敵なお話を伺いました!

「音が出ない! なんで? くやしい!」
その思いが、ちいさな心に火をつけた

—–尺八を始めたきっかけは?
ちいさな頃から音楽に囲まれた環境でした。祖母が箏曲家だったので、祖母の家に行けば箏や三味線の音が聞こえてくる。さらに父も母も音楽が好きだったので、色いろな音を聴いて育ちました。カセットデッキが僕の遊び道具で、とにかくいろんな音を録音して遊んでいました。
—–その頃から音に関心があったんですね。
そうですね。小学校の音楽の時間になるとハーモニカやリコーダーなどを習いますよね、その時間がとても楽しくて。特にリコーダーは興味深く、家で、学校で、暇さえあればずっと吹いていた記憶があります。
—–リコーダーはたて笛…まさに後に尺八奏者になる片鱗が伺えますね。
はい、そんな僕の様子を見て、祖母や両親が「尺八をやらせてみたらどう?」と。もともと尺八の音は聴いていましたし、音としては特別なものではなく身近な存在だったので、吹いてみたいなと思っていたこともあり「じゃあやってみようかな」と始めました。
—–それがおいくつの時ですか?
小学校5年生の時ですね。ところが、いざ始めたものの、まったく音が出ない! これがまた衝撃的で、周りの人が尺八を演奏しているところは見ていたのに、自分が吹くと鳴らない…「なんでこれ、音が出ないんだろう?」と非常に悔しく思いましたね。音がまるきり鳴らないというのが、逆に自分の中の火をつけたというか。それでたくさん練習をして、音がちょっとでも出たらうれしくて、そんなことを積み重ねてどんどんのめり込んでいきました。
—–その後、人間国宝、故山本邦山先生に師事され、どの時点で尺八奏者としてやっていこうと思われたんですか?
邦山先生には、中学生の頃から教えていただいていました。僕は、割と一度やり始めたことはずっと続けるタイプなので、この道でやっていこう!と決めたというよりは、「できない」「くやしい」「この壁を乗り越えたい」という思いでやってきたら続いてしまった、といった方が正しいかもしれません。尺八はいくつも壁が立ちはだかる楽器で、それを乗り越えた時の喜びがうれしくて。そもそも音楽自体が楽しくて、その喜びと楽しさがあるから、続けられているんだと思います。

ほかの楽器とコラボレートすることで、
改めて尺八の魅力を知ることができる

—–ほかの楽器をやってみたいと思われたことはありますか?
しょっちゅうありましたよ。フルートをや、オーボエをやってみたり。でも尺八をやめて、そちらをやりたいということではなくて、それらをやることによって尺八にフィードバックしていく部分があったのでやったというか。特にフルートは、「こういう技法的なことを尺八にも取り入れたいな」と思わせてくれる楽器でした。そのほかにも、箏とか、雅楽の笙とか、鼓とか、色いろやりました。
—–藤原さんは、他ジャンルの方たちとコラボレートされていますね。
もともと、師匠である山本邦山先生が、ジャズと尺八のコラボレートなどを常にやっていらした方なんです。それを見て育ってきていますので、「あ、そういうこともするんだ」と自分にとっては当たり前のような感覚なんです。「何か一緒にやりましょうよ」とお声掛けいただいたら、割と「やりましょう!」と応えてしまいますね。コラボレートすることによって、色いろなことに気づけますし、何よりも面白いので。
—–改めて尺八のよさが分かると?
はい。“違い”に気付くと、“よさ”が見えてくるんです。邦楽という世界の中にどっぷりつかっていたら分からないことも、一度外に出ることによって見えてくるんですね。特に洋楽とコラボレートするとやはり感覚が変わりますから、凄く刺激的です。海外に行くと日本の良さが見えてくる、というのと同じことかもしれません。尺八や邦楽と聞くと静かなゆったりした曲、というイメージがまだまだ強いので、僕としては色いろな尺八の魅力をもっと知っていただきたいという思いもあります。あえて尺八らしいもの“じゃない”ようなことを常々やってきたというのはありますね。
—–その中で気づかれた尺八の魅力とは?
音色ですね。持っている音色の多彩さ。この楽器の可能性はどこまであるんだろう?と思わせてくれるのが尺八なんです。いろいろな楽器と一緒に演奏することによって、相手の楽器に合わせ、今まで出したことのないような尺八の音色を生み出すことができるんです。例えるならば、パレットに音の色がどんどん増えていくイメージです。「混ぜ方によってはこんな色も、こんな色もできる」というように引き出しが増えていく。今まで墨絵しか知らなかったのに、極彩色を知ることができる…というように。コラボレートすることで、そんなことに気づくことができるんです。


取材中、道山さんが現在使用している尺八を見せていただきました!


尺八の中央には「中継ぎ」というジョイント部分があり、上管と下管に分解できるって知ってましたか? もちろん中継ぎのないもの、長さや細さなどもさまざまで、形状によって音色も変わってくるのだそう。


「形状だけでなく、尺八の作り手によっても音色は随分と違ってきます。だから本数ばっかり増えていくんですよね。短いもの、長いものなど含めると、50本以上は持っているでしょうね」と道山さん。

分かりやすくいえば、僕は、
バイリンガルの尺八演奏家なんだと思う

—–今まで色いろなコラボレーションをする中で、個人的にいちばん尺八に合う!と思った楽器はありますか?
いやぁ、それが割となんでも合うんですよね。基本的に尺八というのは、「歌」と一緒だと思っています。だからその音楽に合った歌を歌えば、それはそれで音楽として成立するんです。ぴったり合わせちゃうこともあるし、逆にちょっと外すこともある。相手の音色を受け入れるだけでなく、こちらの音色も知ってもらいながら、そうやってブレンドしていくことがいちばん大切だし、いちばん難しくおもしろいところだと思います。だから僕は一緒にやらせていただいていて「この楽器は合わないな」と思ったことがないんです。
—–とはいえ、邦楽と洋楽との明らかな違いはありますよね?
それは単に「言葉が違う」ということです。英語と日本語が違うように、音楽の話し方、文法が違うということ。でも世の中にはバイリンガルやトリリンガルの方っていますよね。いろんな言葉を話せる方。僕にとって音楽は、まさに見えないものを表現してくれる「自分の声」、言葉なので、僕は音楽のバイリンガル、トリリンガルでありたいと思っているんです。だからコラボレートする時には、楽器は尺八を演奏していますけれど、奏でる音色(言葉)は英語になっていることもあれば、ここは日本語で、という時もある。それを使い分けている感じです。
—–なるほど!藤原さんの尺八は、コラボレートする中でバイリンガルになったり、トリリンガルになったりされているわけですね。とても分かりやすい説明ありがとうございます!
皆さん難しく考えちゃいますけど、もっと簡単に考えていただければ…(笑)。本当におもしろい楽器なんですよ。

ひとつの場所にいるのではなく、
常に変化しもっともっと自分を高めていきたい

—–さて、今年はデビュー15周年を迎えられ、本当におめでとうございます!
ありがとうございます。
—–これまでの15年はいかがでしたか?そしてこれからどのようなことに挑戦されたいですか?
あっという間に15年経ってしまったという感覚もありますが、改めてじっくりと振り返ってみると色いろなことをやってきたなぁと(笑)。本当に色いろな方と出会って、それによって多くのものを積み重ね自分自身を成長させてもらえた15年だったと思います。先日15周年を記念して、コンサートホールでオーケストラと共演できたのはうれしかったですね。自分にとってのひとつの夢でしたから。そして、まだまだやりたいことがいっぱいありすぎて、なかなか追いつかないほどです…(笑)。
—–来年2月には、横浜みなとみらいホールで、タンゴの巨匠パブロ・シーグレルさんとの公演もありますしね。
はい。そこではパブロさんの新曲をご一緒できるということで、僕自身もとても楽しみにしています。どんな形になるのか期待しています。
—–具体的にどんな構成になりそうですか
今回2部構成で考えています。1部でそれぞれの音楽を披露し、2部でコラボレートする。その両方をお楽しみいただけるコンサートです。お互いの個を尊重しながらも融合していくという、まさに作っていく楽しさを表現できるステージになると思います。コレボレートというと、昔はそれぞれの個のぶつけ合いだったような気がするんですよね。「俺の音はこうだ」とぶつけあっていく感じ。それが、近年、もうちょっとお互い歩み寄って、さらにもっといい音楽を作るためには何ができるか、ということを考えられる時代になってきているような気がしています。そう感じていただけるものを今回の公演でもお届けできたらなと。
—–それ以外にも今後やってみたいことはありますか?
尺八だけのアンサンブル、といったプロジェクトもやってみたいと今考えています。僕は今までいろいろなジャンルの方とさまざまな形でコラボレートをさせていただきましたが、自分のプロジェクトとして“尺八だけで”というのは案外やってきていなかったので。これからはそういった方向にも力を入れていきたいですね。

—–お話をお聞きしていると、音が出なくて「悔しい! 」と一生懸命練習していた小学5年生の藤原さんが、今も挑戦し続ける藤原さんに重なって感じます。
あの時の、初めて音が出た瞬間の喜びというものが、今につながっているんだと思います。僕は常に変化していたいんですよね。ひとつの場所にいるのではなく、もっともっと高めていきたいというか。もっと上手になりたい、その思いがずっとあるだけなんです。
—–では最後に、藤原さんにとって尺八とは?
「声」ですね。自分の声だと思います。言葉にできないものを表現してくれている、僕の声。だから常にそばにいないとダメなものですね。
—–今日はありがとうございました。2月の公演楽しみにしています!

2016年2月、藤原道山さんが横浜にやってくる!
横浜能楽堂プロデュース
音楽革命
starring
パブロ・シーグレル
藤原道山

【会期】2016年2月27日(土)・28日(日)
【時間】14:00〜(13:30開場)
【会場】横浜みなとみらいホール 小ホール
【出演】パブロ・シーグレル(ピアノ)、藤原道山(尺八)、奥田雅楽之一(筝)、北村聡(バンドネオン)、西野ゆか(ヴァイオリン)、山田百子(ヴァイオリン)、大友肇(チェロ)、吉田有紀子(ビオラ)、西嶋徹(コントラバス)、蘆慶順(太鼓)
【曲目】唯是震一:「火の島」、宮城道雄:「ロンドンの夜の雨」、山本邦山:「峠花」、藤原道山「東風」、パブロ・シーグレル「石蹴り遊び」、アストル・ピアソラ:「リベルタンゴ」、パブロ・シーグレル:「12 horas 〜重なる瞬間(とき)」(横浜能楽堂委託作品)、ほか
【料金】(全席指定)¥4,000
【お問合せ】横浜能楽堂045-263-3055

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藤原道山さんからヨコハマ・アートナビ
&ミレア読者のみなさんに、メッセージ
をいただきました!ぜひご覧ください!
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横浜みなとみらいホール

クイーンズスクエア横浜にある1998年に開館したコンサートホールで、「海の見えるコンサートホール」として親しまれている。
大型のパイプオルガンを設置した大ホール(2020席)と、ウッドデッキの屋上庭園を隣接した小ホール(440席)があり、ほぼ毎日のようにコンサートが開催されます。

  • ショップ・スポット名
    横浜みなとみらいホール
    施設の情報を見る >
  • 住所
    神奈川県横浜市西区みなとみらい2-3-6

    横浜みなとみらいホール
  • 電話
    045-682-2020
  • 営業時間
    9:00〜22:00
  • 駐車場
    「みなとみらい公共駐車場」の割引券を販売(通常 ¥520/1h)、割引券:一般¥450、Miraist Club 会員¥350
  • 総座数
    大ホール(2020席)、小ホール(440席)
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