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「水」を描き続ける日本画家・天内純子さん

水を描くことで、誰もが持つ
人間の根源を呼び覚ましたい

ある時は清らかさを、ある時は吸い込まれそうな妖しさを感じさせる「水」。天内純子さんは絶えず揺らぐその有り様に惹かれ、一貫して水を描き続けている日本画家だ。「日本には古くから水に関する神様もたくさんいますし、古事記・日本書紀などにも水はよく登場します。また、水の音を聞いていると飽きなかったり、いつまでもじっと見ていられたりすることもあり、どこか人間の根源につながっているのではないかと。水を描くことで、そういう部分を呼び覚ましたいという思いもあります」。
また、学生時代から子どもへのアート指導に携わってきた天内さんは、大人・子ども問わず参加できる「はなうたアート」を主宰している。「鼻歌が出るほど気軽に楽しくアートをする場で、子どもにとってはやりたいことを思い切りやれる場にしてあげたいですね。大人向けのワークショップではアートセラピーの手法を取り入れ、心のギューッと硬くなっているところを緩めるお手伝いができたらいいなと思っています」。

【個展情報】
会期:6/12(金)〜7/4(土)11:00〜18:00 ※日・月休み
会場:GALLERYエクリュの森(静岡県三島市大宮町2-16-21 伸和ビル1階)

日本画の絵の具は、ニカワ(写真上)と粉末の岩絵の具(写真中)を混ぜ合わせて作る。岩絵の具は同じ色でも粒子の細かさによって細かく区分けされている。作業の様子は動画で公開中!

天内純子さんインタビュー

まず、日本画との出会いから教えていただけますでしょうか。
「絵を描いたり物を作ったりするのが小さいころからすごく好きでした。父の仕事が建築設計士だったり、母が洋服を縫うのが好きだったり、「物を作る」ことが身近にあった子ども時代でした。中学・高校と普通に進みまして、進路を決める時に最初は普通の大学受験を考えていました。でも、友人が「宝塚を受験する」と言い出しまして、私にはこんなに頑張れることあるかなって。じゃあ描いたり作ったりするのが好きだから、美大はどうだろうと。いろいろと調べると、なかなか美大にはストレートでは入れないと知りまして、当時鎌倉にあった予備校に通い始めました。そこでデッサンなど基本的な勉強をしたのですが、当時は日本画を特に意識していませんでした。高校の美術の授業で、扇子に絵を描いた時に初めて日本画の岩絵の具に触れ、予備校でも課外授業で岩絵の具のレクチャーがあり、絵の具がすごくキレイだと思ったんですね。「この絵の具で絵を描きたい!」と思って、日本画に惹かれました。その後一年浪人して、多摩美術大学の日本画専攻に入学しました」

絵の具がきっかけだったんですね!
「はい。日本画の絵の具ってけっこう面倒くさいんですよ(笑)。油絵の絵の具もいろいろありますが、チューブから出してすぐ使えるものがほとんどです。でも日本画の絵の具は粉状で、ニカワ(液体)と混ぜて作らないといけなくて、絵を描くには絵の具を作るところから始まるんです。私はそこがすごく日本的だなと思うんですね。華道や茶道に手順があるのと同じだなと感じます」

日本画に使われる絵の具というと、いわゆる「岩絵の具」ですね。これはどういったものなのでしょうか。
「人工的に作る技術がなかった時代は天然の鉱石、それこそ宝石になるような色のついた石を粉末状に砕いて、ニカワで溶いて紙に描いていました」

本当に石そのものの色なんですね。
「そうなんです。だから源氏物語絵巻とか昔の日本画って色の種類が少ないですよね。今は技術が発達して、人工的に作った色付きのガラスを使う「新岩絵の具」というのができまして、中間色など色のバリエーションも増えています」

水彩画とかだと絵の具をまぜて色を作ったりしますが。
「日本画は混ぜていけないわけではないのですが、そのままの色を使うことがほとんどです。絵の具の粒子がいろいろあって、同じ色でも10段階程あるんです。同じ色でも粒子の比重が違うと混ざらないんですよ。軽いものは浮いて重いものは沈むと。中には混ぜて使っている方もいらっしゃいますが、そのままの色を使うのが基本ですね。私は岩絵の具が好きで日本画を始めているので、絵の具の美しさを表現したいという思いもあります。そういう意味では、「水」というモチーフが合っていると思います」

その「水」との出会いも大学時代だったと伺いました。
「大学4年生になる時に、卒業制作に向けて1年間何をテーマにやっていくかレポートを書いたんです。1〜3年生まで自由に描いていい時期は、木漏れ日とか水とか「揺れ動くもの」をよく描いていたこともあって、そのレポートに「水」のことを書きました。古事記とか日本書紀で調べると「水」はたくさん登場するし、「水」に関する神様もたくさんいるし、古代の文明をみても「水」が描かれていることが多いということを自分なりに研究しました。現代的なことでいうと、「水」を汚す環境問題とか、水に関わることをいろいろな方面から調べまして、改めて「水」はすごいと。調べながら「水」への思いを深めていったという感じです。
あと、誰でも水の音を聞いていると飽きなかったり、いつまでもじっと見ていられたり、民族を超えて人間の根源的な部分に共通していると思っています。今、自分自身で実際に何かに触れることって少なくなっていると思うんですね。実際に会わなくても話さなくてもメールで用が足りるとか。でも実際にふれることって大事なことだと思うんです。少し大げさですが、「水」を描くことで、そういう人間の根源的な部分を呼び覚ましたいという思いもあります」

アートで自分を解き放つ「はなうたアート」も主宰

創作と同時に、教える活動もなさっているそうですね。
「大学時代、幼稚園のアートスクールでアルバイトをしたのをきっかけです。そのスクールは上手・下手ではなく、その子の成長を促すためにアートを利用するという考え方で、お面を作ったりボクシングのグローブに絵の具をつけてパンチしたり、いろいろなことをやるんですよ。静かに座って「画用紙に絵を描きましょう」というのは年に数回で(笑)、子どもたちが自由にアートしています」

子どもから影響を受けることもありますか?
「ありますね。大人って頭で考えてしまうところがあって、一度うまくいったやり方があると、ずっとそれを繰り返してしまったりとかするんですけど、果たしてそれがいいのかというと、そうじゃなかったりして。子どもが何も考えないでグチャグチャって作ったものがすごくカッコよかったりして、「これでいいんだなー」と感じたりします。うまく言葉にできないんですが」

そのアートスクールでの経験があって始められたのが「はなうたアート」だと。
「鼻歌を歌っちゃうほど楽しく気軽にアートをする場です。ストイックに打ち込むのではなくて、楽しくやろうと。特に子どもにとっては、やりたいことを思い切りやれる場っていうのが自信や何かを作り出す力に繋がって、それはアートだけではなくて何かを自分で成し遂げていく力に繋がると思うんです。だから、まずは「楽しもうよ!」ということを大事にしたくて。今は子どもには週一回の教室、大人には単発のワークショップをやっています」

アートというと、どんなことをされるんですか?
「子どもの教室では、何度か同じテーマで続けることが多いです。子どもが「やりきった!」と思えるところまでやらせてあげたくて。単発だと作品づくりを終わらせることに気が行ってしまって、やりたいことをやり尽せているかっていったら、そうじゃない気がするんですよね。子どもによってペースは全然違うので、私は作業が遅い子どもにも納得できるまでやらせてあげたいなと。
最近はだいたい2回ぐらいで作り上げることが多くて、以前は本を作りました。表紙の布にスタンプを押して好きな柄を作るところから始めて、紙を綴じるところまで5回ぐらいかけてやりました」

子どもによって興味のありどころが違うのも面白いですよね。
「そうですね。いろいろな幅が持てるようなことになるべくしています」

大人の場合はどんなことをされるんですか。
「アートセラピーとか芸術療法という言葉に出会いまして、実際に説明を聞いたり体験し、アートセラピストの養成講座で学びました。子どもにとってはアートは心の成長を促すことに有効ですし、大人には心のギューッと固くなっているところをアートが緩めてくれる気がします。「自分の表現」って大人になるとなかなかしないと思うんですが、好きな色を使って描くだけでストレス発散になることを私自身感じたんですね。大人のワークショップでは、そういったアートセラピーの考え方と「はなうたアート」の楽しさを取り入れています」

絵を描いたことがない人でも楽しく参加できそうですね。
「もちろんです!誰かに見せるために描くわけではなくて、プロセスが大事なので、何を自分が感じていくか、できたものを見て自分がどう感じるか。面白いことに、自分の無意識の部分が出ていたりするので、「私本当はこういうことやりたかったんだ」と気付くこともあります。ですので、絵がうまい下手はまったく関係ありません」

最後に今後の活動や夢・目標をお聞かせください。
「引き続き、水を描き続けていきたいですね。また、たくさんの人に「自分で創る」ことが馴染んでいくといいなと思います。子どもの成長ももちろんですし、実際に何かを触って感じる機会の一つとして、アートをより広めていけたらいいなと思っています」

はなうたアート・天内純子

多摩美術大学卒業後、鎌倉を拠点に活動を続けている日本画家・天内純子さん。水をテーマにした作品制作を続け、個展も多数開催しています。また、アートを気軽に楽しめる場として立ち上げた「はなうたアート」ではワークショップも実施。子どもだけでなく、大人向け単発クラスも行われていますので、ぜひ参加してみて。詳細は「はなうたアート」で検索を。

  • ショップ・スポット名
    はなうたアート・天内純子
  • 住所
    神奈川県鎌倉市

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