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ココロと体にやさしい自家製天然酵母のパン Fukumimi工房

自然のリズムを感じながら
酵母から丹念に手づくり


日々の食卓にのぼることも多いパン。最近は天然酵母を使ったパンも人気だが、酵母そのものから手づくりしているのがfukumimi工房の店主・瓜生奈美さんだ。
天然酵母づくりに必要なのは、有機レーズンなどの果実、水、粗糖のみ。材料を密閉容器に入れたら、泡立ちや匂いなど発酵の進み具合を見守り、パンづくりに最適なタイミングを見極める。「酵母の見極めにパンの出来の8割がかかっていると思います。発酵が進むとシュワシュワと泡が出てきたりするので、まるで生き物のようで面白いですよ」。
こうして酵母ができあがるまで約3日、パンが焼き上がるまでには5日〜一週間かかるという。まさに自然のリズムにこだわったパンづくりだ。「酵母づくりを通じて、自然を感じることや自然から学びとることは、日々暮らしていく上でも非常に大切だと感じるようになりました。おいしいパンを通じて、自然や環境への思いをシェアしていけたらいいなと思っています」。


瓜生さんこだわりの酵母。左がレーズン、右がレモンを使ったもの。発酵が進むと、ピンの底に沈んでいた果実が浮いてくる


パンの生地をオーブンの中へ。焼き上がったらタテ半分に切って、中身に具材をつめる。モチモチした食感がクセになりそう!


工房内で存在感を放つオーブン。焼く時間や温度を細かく調整していく。焼いている間も、ふくらみ加減などをこまめにチェック


瓜生さんは、酵母のことからしっかり学べるパン教室も開催。仲間とおしゃべりしながら、焼き上がったパンを食べるのも楽しみ

【Fukumimi工房 瓜生奈美さんインタビュー】
まず、パンづくりを始めたきっかけから教えていただけますでしょうか。
「私は美術系の短大を卒業したのですが、小さいころから物を作るのが好きでして、お料理も物づくりの延長として好きでした。
卒業したあとは吹きガラスをやる会社に就職をしまして、週末、自分が食べたいパンを作っていました。もともとアレルギーがありましたので、「なるべく体にいいものを」ということで初めは市販の天然酵母を使っていました。業界ではよく知られた「ホシノ天然酵母パン種」の酵母を使ってパンを焼いては、友達や知り合いにあげたりして楽しんでいました」

そこから一歩進んで、酵母から自分で作ろうと思ったのは、何かきっかけがあったのでしょうか?
「会社で仕事をしている時、アレルギーで体調が悪くなって何年か闘病生活に入った時期がありました。何年か働けない状態が続いて、社会復帰の一つの手段が天然酵母パンだったんですね。ちょうど友達のお姉さんが東京でカフェをするということで、天然酵母のパンを卸してくれる人を探していまして、「週に一度卸してくれればいいよ」という話でしたので、「それならできるかもしれない」と始めました」

その時からご自分で酵母を?
「そのころはまだ自家製酵母というものが一般的になっていなくて、ウワサで「あるらしいよ」と聞く程度でしたので、まだ市販の天然酵母を使っていました。
カフェの仕事や友達に販売する仕事は1、2年続けて、その過程で酵母も自分で作り始めました。いろいろと教えていただいた自家製天然酵母パンのお店の方に、「(自家製酵母とそれ以外の酵母を使うと)菌が混ざる」というお話を聞きまして、それなら私は純粋に酵母から作る自然発酵の自家製天然酵母パンづくりをしていこうと」

空中などで菌が混ざることもある、ということですか!確かに、菌は目に見えないですものね。
「はい。パンづくりももちろん面白いのですが、酵母作りも楽しくて、どんどんハマっていきました。酵母って見た目もキレイですし、発酵してシュワシュワしてきたりするので、「生き物」が変化していく感じが感じられます。生き物を相手にして、自然のものを使ってパンを作っているという感じが私にとっては面白かったんですよね」

なるほど。さきほど、ブドウから作った酵母とレモンから作った酵母を見せていただきましたが、酵母の素材が違うとパンの味も変わりますか?
「シンプルなパンだと、より味の違いがわかるという方が多いようです。酵母とお水と小麦と少量のお塩だけで作っているので、違いがわかりやすいと思います」

ドライイーストで作ったパンと、天然酵母で作ったパンの大きな違いはなんでしょうか。
「天然酵母のパンは、『自然の物を原料にして、自然の発酵で作る昔からの製法』で、イーストの何倍もの時間をかけてゆっくり発酵が進んで出来上がります。発酵は旨味を作る熟成期間でもありますから、時間がかかる分おいしさも増していくんですね。だからなのか、パン教室に通ってくださっている生徒さんの中には、「ドライイーストで作ったパンは冷めるとおいしくなくなる」、「イースト独特の臭いが気になる」という方もいらっしゃいます。
パン教室を開いている思いとして、人間というのはどんなに発展しようと自然の一部ですので、それを忘れないでほしいなという気持ちがあります。いくら発展しても人間の体というのは自然の一部ですので、天然酵母というのはドライイーストのように早く作れませんが、それが自然のリズムなんだよということを伝えたいという思いもあります。その思いを表現する手段が、私にとっては「パン」なんですね。人間だけでなく自然や環境を大切にしないと、という思いです」

一つ一つの手順を大切にパンができていくんですね。実際に作るには、どのぐらいの時間がかかるのでしょうか。
「まずは酵母づくりですですが、どのぐらい時間がかかるかは温度に左右されます。発酵の時間を機械で設定することもできますが、冬に30度に設定して作ったものと、夏、気温が30度の時に作ったものでは違いがあります。やはり酵母は生き物ですので、自然の大きなリズムのなかで呼吸しているんですね。
酵母パンの作り方はいろいろありますが、私のところでは2つやり方をお教えしています。まず一つ目は発酵させた液体をそのまま使うバージョン、二つ目はその液体を粉や水で培養してポタージュ状の「種つぎ酵母」を作るバージョンです。種つぎ酵母を作るパターンのほうが一般的で、天然酵母のパン屋さんではこのやり方をしていることが多いです。酵母づくりに約3日かかりますので、パンが出来上がるまでに最短で5日、だいたい一週間ぐらいかかります」

本当に自然のリズムで作っていくんですね。植物が実っていくような感じですね。
「酵母づくりさえうまくいっていれば、あとは自然の流れで作れば失敗することはほとんどありません」

ちなみに、初心者のころに大失敗したこと、あったりしますか?
「ありましたよ(笑)。始めたころは天然酵母パンの教室もないですし、本もほとんど出ていなかったので大変でした。ふくらまない岩のように硬いパンを焼いては、捨てるのはもったいないからと周りの人に食べてもらっていました(笑)」

たくさん作ることで、酵母が発酵するリズムが掴めたのでしょうね。
「そうですね」

fukumimi工房を始めたきっかけ
続いて、お店を始められたきっかけを教えていただけますでしょうか。
「卸していると、賞味期限など私が「これぐらいで」と考えているよりも、お店の都合で長めに販売されたりするわけです。自分がおいしいと思うタイミングで売りたいので、お店を始めたいなと」

それで直売という形にたどりついたんですね。
「はい」

現在は、主にネットでの販売だと伺いました。
「以前は自宅店舗で週に何回か販売することもあったのですが、教室開催だけでとても忙しくなって……。オーガニックの素材も多く使っているので、売れ残りのないようにと予約のセット販売だけになりました。でも時折お電話で「売っていませんか?」とお問合せをいただくこともあって、1つ1つ気軽に買える場も作りたいなと。また震災以来、地域活動は大事だなという気持ちもありましたので、とりあえず無農薬の横浜産の野菜を知り合いから仕入れて、自宅前のスペースを使って小さなマルシェを始めようと思ったんです。そうこうするうちに、「出店してもいいよ」という人が増えてきて、現在は月に1度「小さな市」と名付けたマルシェを開催しています。手づくりの良さを伝えられる仲間や環境に配慮した活動をしている仲間が増えてきました。
また、アウトドアウェアの販売などで人気の「パタゴニア」さんに声をかけていただきまして、無農薬や有機の野菜などを販売する「ファーマーズマーケット」というイベントでも販売しています」

少しずつ活動の輪が広がっているのですね。最後になりますが、今後の夢、目標をお聞かせいただけますでしょうか。
「健康のことを考えて天然酵母パンを始めましたが、自然を感じてそこから学びとることは持続可能な生活スタイルを目指すうえでは非常に重要なポイントだと思うようになりました。その思いを多くの人とシェアしていきたいですし、私の場合はパンづくりを通じて伝えていけたらいいなと感じています」

fukumimi工房

自家製天然酵母を使ったパンを製造・販売する「Fukumimi工房」。動物性脂肪を使わないパンは体に優しく、毎日食べても飽きない美味しさ!ホームページで販売を行っているほか、月に一度店舗の前で開かれる朝市「小さな市」などでも購入可能です。

  • ショップ・スポット名
    fukumimi工房
  • 住所
    横浜市磯子区栗木2-14-21
  • 電話
    045-772-2460
  • 営業時間
    平日11:00〜18:00(変更あり)

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