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横浜市神奈川区 横浜醤油

うまい!と言われる醤油づくりに情熱をそそぐ
「横浜醤油」社長の筒井恭男さんにお話を伺いました。

1937(昭和12)年創業
のれんを守る老舗の味わい

 横浜にたった一つ、醤油メーカーがあるのをご存じだろうか。その名もずばり「横浜醤油」。今年で創業77年を迎える老舗だ。
 最寄りのJR「大口」駅を出て、車を走らせること数分。あたりにはうっすら醤油の香りが漂い始め、工場に近づくにつれ、次第に濃くなっていく。迎えてくれた三代目社長の筒井恭男さんは、幼いころから醤油づくりを手伝い、2200?入り醤油タンクに一滴でも異物が混じればニオイでわかる、というこの道の達人である。
 「横浜醤油」の特長についてお尋ねすると、「塩気の強すぎないまろやかな味わいです」と即答。重ねて秘伝の製法を伺うと「それは秘密」と笑って、「大手と違ったおいしさをいかに出すかを考え続けています。新商品もどんどん出していきたいですね」と教えてくれた。
 その言葉にたがわず、卵かけご飯専用醤油や食べる醤油などを次々と発表。どれも一度食べたら忘れられない、横浜の味として、ぜひ知ってほしい逸品だ。

筒井 恭男(つつい やすお)
父、兄に続く三代目として「横浜醤油」の味を守る。幼少時から家業を手伝い、14年前、工場が神奈川区白幡上町から現地へ移転したのを機に社長を継いだ。豊富なアイデアで新商品を次々と生み出し、舌の肥えた飲食店関係者にもファンが多い。

詳しくはこちら! 横浜醤油

横浜市神奈川区松見町にある「横浜醤油」。同区内白幡上町からの移転に伴い、14年前、同業者と共に岐阜に共同センターを立ち上げた。現在は、共同センターでもろみをしぼる作業までを行い、本社工場では加熱と、味・香り・色などを整える作業を行っている。ちょうど取材に伺った日は、生醤油を加熱殺菌する火入れの日。工場内に何本も並ぶ醤油タンクからほんのり湯気がのぼっていた。
共同センターは、いくつもの醤油業者の仕事をしているんですね。
 そうです。小さな醤油業者は立地条件のいいところにある場合が多いので、広い工場を維持していくのが大変です。そこで、小さい業者でまとまって、安い土地に工場を建てようと。ただ、みんな同じやり方でドカンと醤油を作るわけではなく、各社の仕込み方法に沿って作っているんですよ。
こだわっているのはどんな点ですか?
 大豆と小麦の調合ですね。それから麹菌と塩分の調合。大豆はふかしが甘いと濁りが出てしまうので、ギリギリのところにこだわっています。
お醤油の原料は各社とも同じだけれど、それぞれこだわりがあると。
 同じような仕上がりになるはずだけれど、最終的に色が濃いとか薄いとか、やはり違いは出ますね。その時の気候などに左右されますから。うちは機械で熱を加える製法ではなく、ゆっくりゆっくり仕込んで、夏を越さないともろみを絞りません。炭酸発酵、乳酸発酵全部させて、うまみ成分が十分出たところで絞ります。早くて10ヶ月かかります。昔ながらの作り方ですね。僕はそれが一番おいしいと思っています。
機械に頼らず、作っているんですね。
 醤油づくりはね、生き物を相手にしている仕事なんです。
麹菌ですものね。
 そう、菌っていうのはカビでしょ。若い方の中には「醤油にカビが出た」とビックリされる方もいますけれどね(笑)。でも、カビが出て当たり前。無添加の醤油というのは、本来カビが出るものなんです。出ないものはカビ止めとか、いろいろな処理をしているんですね。
ただ、横浜醤油さんではカビが出ないように、80度から85度で加熱をしていると。
 そうなんです。
横浜に運ばれてから火入れをして、味付けなどをするわけですが、独自性を出す上で、どんな工夫をされていますか?
 まず、塩かどのないことね。さっきテイスティングしてもらいましたが、火入れしている最中の温かい醤油は、ふだん食べている醤油とまったく違ったでしょう?マイルドで優しい横浜らしい味を作りたいと思っています。
秘伝の調合とかあるんですか?
 これは言わない(笑)。いろいろやり方はあります。ただ、秘伝の調合といってもね、もともと材料は大豆と小麦、塩水だけなんですよ。簡単なもんなんですよ 。
どちらも菌を使いますもんね。
 麹をつくる段階で、熱があがりすぎて40度をすぎると、納豆菌が発生しますから、ニオイがしてお醤油にはならないんです。うまく空気をいれて冷まして、麹を作っていくんです。さらに塩水を加えたりして、木の桶に入れて寝かせて。
シンプルなだけに難しそうですね。
 いや、誰でもできますよ(笑)。醤油づくりに携わる人の中には大学で醸造を勉強している人もいますが、私はそういうところには行っていないんです。ただ、子どもの頃から手伝いをして、叩き上げられている。父から「味を体で覚えろ」と。
おいしい味を知っているというのが強みなんでしょうね。
 自分の会社の醤油だから、やっぱり体で覚えているんでしょうね。よく人間の五感と言われますが、僕は細かくいうと十感あると思っているんです。味覚と一言でいっても、甘いとかすっぱいとか、いろいろあるわけでしょ。最終的に何が信用できるかっていったら、自分の感覚、味覚だけなんです。これが信用できなくなったら、私はもうやめますよ(笑)。
「横浜醤油」創業のいきさつとは?
もともと会社ができた成り立ちを教えてください。
 一番初めはね、まわりの農家だとか地主さんが集まって醤油とか味噌を作っていたんです。それが昭和10年ごろだったでしょうか。そのころ、叔父から声がかかって、父がその事業を引き継いだんです。だから父もスタートは完全なる素人でした。大学を出たあと、銀行員をしていたんですから。醤油づくりをすることになってから東京農業大学で勉強したりして。余談ですが、父は大変な勉強家で、東京農業大学の醸造科設立にも関わっているんですよ。
そういう父を持つ息子としては、当然、家業を継ぐものと?
 いえいえ全然(笑)。私には兄がおりますしね。もともとは別の仕事をしようと思っていました。
それが、どういった経緯で三代目の社長に?
 きっかけは、14年前の工場移転でした。当時は同じ神奈川区の白幡上町というところに1200坪ぐらいの工場がありまして、麹菌を作る一番初めの段階から全部やっていたんです。でも、横浜市から「この土地に地区センターを作りたい」と相談されまして、売却を決めたんです。その時に、麹・もろみは共同センターを立ち上げまして、横浜の工場では火入れ以降、仕上げの工程だけをやろうということにしました。それなら100坪程度の土地で事業ができるだろうからと、今の土地に移りまして、社長も私に代わったんです。
100坪でもだいぶ広いですよね。もともとは何があったんですか?
 以前は肉屋の工場だったんです。だから、肉についている菌があるでしょ。醤油に使う菌とは全然違う菌ですから、醤油づくりになりませんでした。昔の醤油屋や酒蔵は、独特の菌が住み着いて美味しいものを作り出していたんです。そういう菌がまったくないから、3年ぐらいは苦労しました。
今14年たって、やっと元通りの味になったと?
 まだ完全に以前の味ではないかもしれないですね。私が年をとって、テイスティングする味覚が変わってきたのかもしれないですが。
伝統の味を守っていきたい、とお考えですか?
 いえ、全然(笑)。以前の工場とは味は確実に変わってきています。昔は7割以上が業務用でしたが、今は9割が家庭用ですしね 。
意識して変えてきた部分とは?
 いかに自分の特長を出すか、ですね。大手と違ったおいしさを、いかに出すかを考え続けてきました。塩気の少ないマイルドなおいしさで、「横浜の醤油はうまかったな」と誰もが言ってくださるようなものをと。
いろいろ新商品も出されていますよね。
 そうですね。唐辛子醤油もありますし、食べる醤油、卵かけご飯用醤油なども出しています。
家庭用醤油に何か加えて、アレンジされているんですか?
 違うんですよ、全部1から変えて作っています。
定番の醤油のほか、どんどん新しい製品が出ていると。
 従来の醸造ものから脱皮したいんですよ。(醤油のように一度買うと数ヶ月使うものではなく)1、2時間でなくなるようなものとかね。
え、1、2時間でなくなるとは、例えばどういうものですか?
 いろいろ作りましたよ、醤油の生キャラメルとかね。失敗しちゃいましたけどね。2ヶ月ぐらい置いておくと、砂糖がザラザラ浮いてきてね。できて1、2週間ぐらいは「いいね!おいしいね!」って好評だったんですけれど。作るのも大変でしたよ。ちょっと練りすぎると、すぐ普通のキャラメルになってしまいますし、0.1秒の差で練りをやめるかどうかで、パッと変わっちゃう。ホント難しかった。
今後、新たに挑戦してみたいことはありますか?
 もろみを絞った後のカスを使って、何かできないかと考えています。ほかの業者は捨ててしまっている部分を、うまく使っていこうと。ぜひ、楽しみにしていてください。
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工場や直売所などがある本社。工場見学もOKで、時には観光バスが来ることもあるとか。醤油づくりの工程が見られる、貴重な場だ
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工場の直売所で販売されている詰め合わせセット。注目は、中央の「ハイ辛辛辛醤(ハイカラジャン)」。ピリッとした旨さで餃子のタレなどとして、また料理の隠し味として使える
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加熱用タンクを上から見たところ。1本あたり約2200?が入る巨大なタンクが工場内には何本も並び、湯気をたてていた
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天井のパイプを通じて、加熱用タンクに生醤油が注がれる。火入れをすることでマイルドな味になり、カビなどの発生も防げる
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「横浜醤油」三代目社長の筒井恭男さん

横浜醤油

横浜唯一の醤油メーカー「横浜醤油」。大手とはひと味違うまろやかな味わいは、一度食べたらヤミツキになりそう!
通常のお醤油のほか、卵かけご飯専用醤油や食べる醤油など、さまざまな商品があるのでぜひお試しを。
本社工場には直売所があり、工場の見学も可能。

  • ショップ・スポット名
    横浜醤油
  • 住所
    横浜市神奈川区松見町3-1-6
  • 電話
    045-401-9317
  • 営業時間
    9:00〜17:00
  • 喫煙
    不可
  • サービス料・チャージ
  • 平均利用額
    〜1,000円
  • 個室
  • 総座数
  • ペット
    不可
  • テイクアウト/お弁当
  • お子様メニュー
  • ドリンク
  • コース料理
  • 貸切
    不可
  • URL

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