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神奈川県平塚市「岡村工房」朝子さんの陶・造形

可愛いのに甘過ぎない。ナチュラルな風に吹かれているようでいて、自ら風を起こす、そんな力強さがある。朝子さんが提案しているのは「毎日の暮らしのなかにアートを」。陶芸って、こんなにユニークでおもしろい世界だったんだと気づかせてくれる。

 柔らかくて穏やか。質問を投げかけ、朝子さんの返してくれる答えのすべてがしなやかで優しい。こうした人柄が作品にもにじみ出て、見ているだけで心が癒される。幸せな気持ちでお話を聞いていると、ニコニコ笑いながら朝子さんのお母さんがお茶を淹れてくれた。さっそく朝子さんの作品の印象を聞いてみた。
 「この人、作品を作る時、何も考えていないのよ(笑)。普通の人なら上手く作ろうとして色々と考えるじゃない。なのに鼻歌うたいながら。でもね、とてもいい感じで自分を表現していると思うわ、自分の娘ながら。なんちゃって(笑)」。その言葉に朝子さんも私たち取材陣も愉快な気持ちになり、声に出して笑ってしまった。なんて素敵な親子関係だろう。陶芸を通じて結ばれている父、母、朝子さん、弟。「岡村工房」は個性豊かな家族で成り立っている。
父親から陶芸の基本を学んだ
 陶芸家の両親のもとに生まれた朝子さん。美大を卒業後、工業デザインに携わったものの、やはり手を使ったモノ作りをしたいと父親に陶芸のいろはを教わった。
 「父は若い時から色々なところで修業を積んできました。父の作る磁器はろくろできちんとした形を作ります。真っ白い土にわずかな鉄粉さえ入ってもダメな世界。私にはとうていできない。父に土の練り方から基本を学び、今は自由に作らせてもらっています。そんな私のめちゃくちゃ加減を母は理解してくれています(笑)。昨年、家族展を初めて行い、それをきっかけに母が久しぶりに作品を作り始めました」。
 スーツ姿の父親を見たことがなく、徹夜が続けば昼寝をする。子どもの頃はわからなかったが、好きなことを仕事にして家族を養ってくれていた父親のすごさを今は感じるという。
子ども達の仕草や勢いに刺激を受ける
 「週の半分、中学校で美術を教えながら、工房で子ども造形教室や大人向けの陶芸教室も行っているのですが、子ども達から受ける刺激や得るものがすごくあります。もう、それは作品を作る時の仕草や勢いとか。何も考えずに作ったかのような何ともいえない力強さや面白さがあります。一番小さな子は4歳。バブバブ言いながら作ってますよ(笑)」。
 週末は創作活動に励むほか、大磯市などに参加している。会場にいると購入してくれる人と直接、話ができるのが嬉しいと朝子さんは言う。
 「あるおじいちゃんから『万人受けをする作品も必要なのかもしれないけれど、これだけのものが作れるのだから、もっと個性のあるものを作ってごらん。たとえば、これはタラコしかのせちゃいけないというくらい個性のあるお皿を!』って言われました(笑)。何度も私のところに来て、そう言って色々購入してくれました。きっとモノ作りをされている方なのかもしれません。ほかにも、買った器でこんな盛り付けをしたと写真を見せてくれたり、さんまをのせるお皿が欲しいと言ってくれる方もいて、作家冥利に尽きると感謝しています」。
 朝子さんの今後の目標を聞いてみた。
 「大きな陶板やオブジェを作りたいですね。あと、陶芸作品がもっと日常に使われるよう、色々なものを作っていきたいと思っています」。

岡村 朝子(おかむら あさこ)陶・造形作家。中学校美術の非常勤講師。子ども造形教室講師。2001年武蔵野美術大学 工芸工業デザイン学科卒。2002年より陶芸を始める。2009年すどう美術館賞受賞のほか様々な受賞歴を持つ。グループ展も多数。大磯市などにも出品。
岡村工房
TEL:0463-31-4555
http://www.scn-net.ne.jp/~okamura/html/
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コースターにも壁掛けにもなる陶板(とうばん)のイラストは、その時の思いで自然と動く。手前の小さなおうちは、ペーパーウエイトにもいいしインテリアにも。「その人その人の思うまま、自由に使ってほしい」と朝子さん。

朝子さんが陶芸の道へ進むようになったきっかけを教えてください。
私は陶芸を始めてまだ10年くらいしか経っていないんです。ちょっと話が昔にさかのぼってしまうのですが、もともと染織をやりたくて美大に入り、工芸工業デザイン科でひととおりのことを学びました。卒業後はデザインの仕事に就いたのですが、どうもコンピュータを使う仕事に向いていないと自覚して(笑)。やっぱり自分の手を使って何かを作る、そうした仕事をしたいと思ったんです。両親がずっと陶芸の仕事をしていた影響もあると思うのですが、“身近にこんなに素晴らしい環境があるじゃないか”って、あらためて気づいたんです。それで父にお願いして陶芸の基本から教えてもらいました。

お父さんの作風と朝子さんの作風はまったく違いますね。
そうですね、父の世界観は本当に繊細だと思います。若い時から色々なところで修業を積んで、ろくろできちんとした形を作りますし、真っ白い土にわずかな鉄粉さえ入ってもダメな世界。私にはとうていできない。土の練り方をはじめ、いちから基本を教わりましたが、今は自由に作らせてもらっています。

朝子さんご自身の作風も初期と比べると変わってきていますか?
初期の頃の自分の作品を見ると、まだまだ土のことをちゃんとわかっていないなぁって感じます。だんだん自分の好きな感じに土のブレンドができるようになったと思います。

弟さんも陶芸をされていらっしゃいますが、家族で同じ仕事をするにあたって、いいことや大変なことってありますか?
自由にやらせてもらっているし環境が整っているので、大変なことって思い浮かばないんですよ。ほんとうにありがたいと思っています。弟は4年くらい前から陶芸を始め、二人できょうだい展もやるようになりました。弟はすごく人付き合いが上手なので、モノ作りの人たちが自然と集まって輪が広がるんです。私はそこにのっかって(笑)。弟のおかげで活動範囲が広がりました。造形教室は母がしていたのですが、今は私と弟が引き継いでいます。

ステキな環境ですね、朝子さんが心地よく活動されているのが伝わります。朝子さんの一日、あるいは一週間はどのようなサイクルですか?
月、火、木、金の週4日は、もうひとつの仕事として中学校で美術を教えています。午後3時頃には工房に戻ってきて制作をしたり、水、木はここで造形教室をしています。子どもたちの作品や作る時の勢いから得るものってすごくあるんですよ。それに子ども達の集中力ってものすごいんです。一生懸命に自分の思った形にしようとするし、“こうしたいんだ!”という一見、無謀なことでもやってみようとする。大人にはなかなかできないことなんです。

朝子さんが今チャレンジしたいことってありますか?
すごく薄いものを作りたいですね、陶芸ではありえないようなもの。ふつうなら割れちゃうだろうというギリギリの世界までトライしてみたい。あと、布が好きなので質感を出すために、布を貼付けて作ったりもしています。布を押し付けるだけじゃなく、私の場合は布そのものを土に吸い込ませて貼付けて焼きます。これも最初は“やってみたい”から、“こうやったらどうなるんだろう?”で始まったものなんです。あと、大きな陶板やオブジェも作ってみたいです。
最近、『万人受けする作品も必要なのかもしれないけれど、これだけのものが作れるのだから、もっと個性のあるものを作ってごらん。たとえば、これはタラコしかのせちゃいけないというくらい個性のあるお皿を!』って、あるおじいちゃんに大磯市で言われたんです。最初ビックリしましたけれど、そのおじいちゃんは色々なところを回っては私のところに寄って、いくつも買っていってくださいました。迫力もあって、きっとモノ作りをされている方なのかもしれません。そんなこともあり、個性を打ち出した作品も作ってみたいと思っています。

タラコしかのせちゃいけないお皿、ある意味すごいストイックですが、見てみたい! 陶板はメインの写真でも紹介させていただいていますが、すごく魅力的。朝子さんワールドが板のなかに広がっていると思いますが。
ありがとうございます。これは使う人の思うまま自由に使って欲しいと思っているんですよ。壁に飾っても、お皿やコースターにも、何でも自由自在に。

この線画はなにか意図して描かれるのですか?
それが私の場合、思うままなんです(笑)。思うのと手が一緒って言ったらいいんでしょうか、最初から「アレを描くぞ!」というのがないんです。

そのせいでしょうか、勢いがありますよね。板には入りきらない左右、天地にまだその風景なり模様なりが続いているような。そして「おうち」、これもまた可愛らしい…。
これは陶板が2010年くらいからなので、それよりも少し前、グループ展をした時に作り始めました。これも陶板と同じように、その時の気分でおうちの模様が出来上がるんです。ただ、なぜか一番最初に描くのはドアって決まっているんです。これ、買ってくださる方々にユーモアがあって、「今日は家を買いに来たよ」とか、「先月は4LDKの家を買ったから、今日はこっちにしようかな(笑)」とか。毎月ひとつずつ購入してくださる方もいるんですよ。

朝子さんの作品は、どこに行くと見たり買ったりできるのですか?
毎月行われている大磯市(おおいそいち)や、小田原でおこなわれているカミイチなどに出店しています。あと、辻堂駅前にあるテラスモール内の店舗「インナチュラル」さんにも置いてもらっています。

(朝子さんの作品が並ぶのはコチラ↓)
6月1日(土)〜30(日)箱根町宮の下のNARAYA CAFÉにてグループ展
時間:10:30〜18:00、定休:水曜・第4木曜

最後に、朝子さんが思う陶芸の魅力を教えてください。
イメージしたり、思った形に作りやすいと言ったらいいんでしょうか、つけたり、削ったりする工程を経て、イメージのままの形になるのが魅力かな。陶芸をはじめアートが、たくさんの人たちの日常にもっとあるといいなと思うので、色々なものを作っていきたいと思っています。

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2009年頃から作り始めた「おうち」。カンナで削り、白化粧をして乾燥させてから針で柄をつける。なぜかいつも最初にドアの柄をつけ、最後が屋根なのだとか。柄をつけ終えると再び乾燥させ、素焼き、本焼きをして出来上がり。

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工房の壁に貼られていた土鍋の下書きメモがかわいい。「下書きっていうよりも、イタズラ書きみたいなものなんですよ(笑)。これは私がイメージをして実際は父が作りました」。

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辻堂駅前にあるテラスモール内の店舗「インナチュラル」さんなどに並ぶ作品が工房にズラリと並んでいる。洋食にも和食にも合う水玉が可愛い。

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何とも可愛らしいお花。これは小田原にある「すどう美術館」で個展を開いた時の作品のひとつ。「そこにはお庭があったので、お花の焼き物を植えてみたんです。これもやりたかったことのうちのひとつでした」。

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上の5枚は、すどう美術館で個展を開いた際の写真。朝子さんにお願いをしてデータを送っていただきました。

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お花を使ったヘアゴム! 女子の心をぎゅっとつかむ作風にドキドキです。

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朝子さんワールド全開、かわいい作品を並べて撮影させてもらいました。

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朝子さんがご自身のお部屋に飾っているというお気に入りの陶板。かわいいです!

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靴箱の形からヒントを得て作ってみたという陶箱。ランダムにおいた数字の柄がおしゃれ。

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造形教室の子どもたちとのコラボ作品などなど。思わず見入ってしまいます!

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朝子さんの弟さんの作品。陶器のミニカー。ひとつひとつ表情のある人や動物が手描きで描かれています。

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朝子さんの一番の理解者、お母さん! 歯医者さんへ行くお母さんを引き止め、朝子さんとのツーショットをお願いしました。

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こちらはお母さんの作品の一例。お雛さまやうさぎが小さくチョコンと。かわいいんです!!

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