mirea 街を彩る ヒト・モノ・コトをつなぐ[ミレア]

これこそが職人技。土橋印房の印章

作業台の上に並んだ年季の入った道具たち。墨、硯、手鏡、細筆、ピンセット、束に並んだ印刀、そしてすべて鋭角に揃っている鉛筆。これらは、どのようにして使われるのだろう。土橋さんは目の前の灯をパチンと点け、一連の作業を見せてくれた。

雁皮(ルビ:がんぴ)とよばれる薄い紙に三角定規をあて、字割という作業をおこなう。字割とは文字の数とバランスを考え、スペース割りすること。字割をしたあとに細筆を使って文字の下書き、字入れをおこなう。

不思議だ。普段、私たちはパソコンで文字を入力し、モニターあるいは出力した紙に印字された完璧ともいえる文字に見慣れているのに、いま目の前で土橋さんが細筆を操り、雁皮に書いている文字の方が完璧なシルエットに見えるのだ。それでも土橋さんは「およその目検討なんですよ」と言う。

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サンドペーパーで印面を平らに整え、その印面に朱墨を付ける。これを朱打ちといい、印影を確認しやすくするために行なう。その上に、さきほど字割した雁皮をのせる。事前に小さく雁皮はカットしておく。
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印面に雁皮をのせたら、たっぷり水をふくませる。すると墨で書いた文字が反転して印面に映り込む。

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ピンセットでそうっと剥がすと、文字が逆向きにきちんと映りこんでいる。この間、息をつめる緊張の連続だ。いや、土橋さんは長年の経験と匠の技を持って、私たちに作業の流れを見せてくれているのだが、こちらは初めての経験と、目の前でものすごい技と芸術を披露してもらっていることに興奮し、瞬きをするのも惜しいのだ。

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緊張の面持ちの私たちに向かって、わかりやすく3種類の印面を見せてくれた。それがこちらだ。一番左側が、今まさに目の前で展開された「字入れ」したもの。中央が「荒刻」といい、印刀で彫っている途中のもの。一番右側が「仕上」で、丁寧に彫ったもの。
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印刀で彫る間、はさみ木と呼ばれるもので挟んで作業する。

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文字が間違っていないか、読みの順番がきちんと右から左へ読むようになっているか、手鏡に写して確認する。これは、あえて私たちに見えるように手鏡を向けてくれたところ。

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私たちが普段使っている朱肉はスポンジに朱色のインクが染みたもの。ところが今回、本物といわれる朱肉に出会った。それがこちら。
ぬいぐるみの中味に使われるパンヤ綿に朱墨を湿したものだ。鼻を近づけると墨の良い香りがする。写真からねっとりとした感じが伝わるだろうか。ここで土橋さんが大変興味深い実験をしてくれた。本物の朱肉で押印したものは、火で燃えても消えないと言うのだ。その証拠がこれ。焦げた紙の中でも朱色の文字が残っているのがわかる。

こうした一連の工程を惜しげもなく披露してくれたあと、土橋さんが今まで作った作品を見せてくれた(実際はこの他にも大量にある)。
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押印された印影を見ると、どれも芸術的。緻密、そして絶妙なバランスで文字が組み合わさっている。白の空間、間合い。クリエイティブ脳がまた刺激される。

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分厚い書籍を広げ、漢字のなりたちを教えてくれる土橋さん。物を教える姿に貫録があるのは、かつて全国唯一訓練校にて後進の指導育成と、現在、全技連マイスター神奈川現会長を務める経験から。私たちの目線にたった物言いをしてくれるので、とてもわかりやすく、温かい雰囲気が生まれる。
いつもこうして土橋さんはお客様と対面し、用途を伺い、その場で何種類か手書きで書き上げる。用途と希望と金額をすり合わせ、お客様が納得すれば、約束の期日に商品を手渡すために、匠の世界が始まる。こうした奥深い手技の芸術が、末長く横浜で愛されることを願ってやまない。

土橋印房

印章とは判子本体のことを言い、印鑑は印章を押したあとの印影を指す。

さて、その手彫りの印章を一度じっくり見て欲しい。蜘蛛の糸のように繊細な部位に驚くことだろう。これが手仕事のなせる技だ。人生の中で、何度か印章を購入する機会があるのならば、ぜひ職人の手技が光る逸品を手に入れたい。

  • ショップ・スポット名
    土橋印房
  • 住所
    神奈川県横浜市中区住吉町5丁目56
  • 電話
    045-681-2523

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