mirea 街を彩る ヒト・モノ・コトをつなぐ[ミレア]

着物の魅力を多角度から伝える人●着付・着物コーディネーター 西方順子さん

より自由に。より気軽に
着物を日常のワンシーンに

 「着物は素敵だけれど、着付けは難しそう」。多くの人が抱きがちな、そんな固定概念を軽やかに打ち破ってみせたのが、独自の着付け方法「結流」を確立した西方順子さんだ。横浜元町にて「Reきものサロン結」を立ち上げ、今年で5年。多くの女性たちに、着物の魅力を伝え続けている。

 「以前、呉服店に勤めていました時に『着物を買ったけれど袖を通す機会がなくて』とおっしゃるお客様がすごく多かったんですね。私は販売するだけでなく、着ていただくまでが自分の仕事だと思っていましたので、お客様にもっとしっかり向き合いたくて、自分でサロンを始めたんです」。

 自らの経験をもとに考え出した「結流」は特別な道具は使わず、ヒモだけで手軽に着られるのが特長。「フォーマルな場だけでなく、美術館や音楽会などにも気軽に着ていっていただきたいですね。ほら、元町のような洋風の街並に着物の方が増えたら、すごくオシャレだと思いません?山手の洋館も、着物姿で写真を撮ると、とっても素敵なんですよ」。

西方 順子(にしかた じゅんこ)
約30年前に着付けを習ったのがきっかけで、着物の世界に魅せられる。約10年間の呉服店勤務などを経て、2008年に「Reきものサロン結」をスタート。独自の着付け方法「結流」を確立し、着物を気軽に楽しみたい女性たちにレッスンを行っている。
http://kimono-yuiyui.com
横浜市中区元町3-143 アトリエ元町102
045-681-0765

まずは着物に興味を持ったきっかけから教えていただけますか。
結婚した時に母が付け下げという着物を買ってくれたんですが、すぐに娘が生まれまして、イベントの時に自分でその着物を着たいなと思って着付けを勉強したんです。

その前というと、成人式で着たぐらいですか?
実は私、成人式に行っていないので着物を着ていないんですよ(笑)。父が呉服屋に勤めていたことがあって、小学校ぐらいの時にウールのアンサンブルの着物を買ってくれたんですね。それで時々着せてもらっていました。その時はうれしいというか、「着せられていた」という感じだったかもしれません(笑)。やはり結婚して着る機会が増え、人に着せてもらうより自分で着られるようになりたい、と思ったのがきっかけだったと思います。

その時はどこかに習いにいらしたんですか?
子供がまだ小さかったので、家に講師の方に来てもらって習いました。だいたい30年ぐらい前ですね。その時は子供の入学式・卒業式に自分で着られたらいいな、という感じでした。その後しばらくして、着付けをやっている友人と映画を見に行った時に『今日着物で来ようかと思ったのよ』と言われて、私その時ジーンズだったので、「えーっ」とびっくりしてしまって。じゃあ、私も着付けを習ったことがあるから一緒に着物で鎌倉に行きましょうよ、という話になったんです。

着物で出歩くと、すごく注目されますよね。
ええ。この間、その鎌倉に行った時の写真が出てきまして、見たらひどい着方をしてるんですね(笑)。もう帯なんか落ちちゃってるし(笑)。それでも皆さんすごく誉めてくださって、外国人の方にも「一緒に写真を撮ってください」と言われたりして。それをきっかけに、着物で桜を見に行ったり、少しずつ出かけることが増えていったんです。

着物で出かけるのは大変なイメージもありますが。
着ること自体、洋服に比べて大変ですよね。動きも階段をあがる時に裾をつまんだり、シワにならないよう座る時に気をつけたり、洋服の時とは変わってきます。そういう気遣いを面倒と感じるか、身が引き締まって気持ちがいいと感じるかの違いでしょうね。たとえば電車の中でジーンズ姿で座っている人を見ると、だいたい膝が開いています。でも着物の場合、絶対そうならないですから。そこがいいところだと思います。

確かにそうですよね。着物で外出を始めた時は、まだまだご趣味だったと思いますが、仕事にしようと思ったのは、何かきっかけがあったのでしょうか?
40代前半で改めて「私には着物しかない」と思ったんですね。仕事として探していたら、たまたま呉服屋さんの募集があって、そこに入ったらすごく楽しかったんです。そこから着付けも本格的に勉強しようと思って何カ所か通ったんですが、なんだかしっくりこないんですね。教えてもらっても、「ここはこうした方がいいんじゃないか」とか思ってしまって。それで、呉服屋さんで着付けの講師をしながら、今の結流を確立していったんです。

ご自分が普段着て出歩いていらっしゃるから、崩れにくい着方というか、楽な着方がわかってらっしゃるんでしょうね。
自分で実際に体験してみないとわからないことがいっぱいありますよね。人によっても紐の位置とか締め方は違いますしね。

呉服屋さんでは、どういったお仕事をされていたんですか?
私はやっぱり着付けを教えることが好きなんですね。呉服屋の同僚には有名な着付け学校を卒業した方もたくさんいたんですが、私は自分から率先して「私にやらせてください」と手を挙げて、講師の仕事をやっていました。もうしゃしゃり出て(笑)、チャンスをつかんでいました(笑)。やっぱりアドバイザーとして担当しているお客様に着方まで教えてあげたいという気持ちがありましたのでね。

お客さんにしてみれば、着物選びから着付けまで同じ人にずっと相談できるわけですし、いいですよね。
何十万円もするお着物を買っていただくので、ぜひ着ていただきたいんです。結構ね、「買ったけれど、シツケ糸もとっていないのよ」とおっしゃるお客様が多かったのでね。着ていただくまでが自分の仕事だと思っていたので、販売と着付けはセットだと思っていました。

呉服屋さんにはどのぐらいいらしたんですか?
2つの会社あわせて10年ぐらいですね。

独立を考えるきっかけは、なにかあったのでしょうか?
最初のうちは考えていなかったのですが、何年か勤めていて、販売の仕方などに疑問を持ち始めた部分がありまして。着物をただ売るのでなく、その方に本当に合った物をお勧めしたいなという気持ちが強くなって、独立したいと思うようになりました。

こんなサロンにしたい、という目標はありましたか?
お客様に頼られ、また安心してもらえるサロンを作りたい、という思いがありました。呉服店に勤めていた時、担当していたお客様が黒の喪服を持っていらしたんですね。裏が黄変していて、そこを替えたいと。呉服屋としては新しい物を販売しようとするんですが、でも私は裏地を替えれば十分着られると思ったんです。生地がすごく良いものだったので、なくしてしまうのはもったいない。良いものを残していきたいと。そういう時に、お客様にとって一番いいアドバイスをするためにも、やっぱり独立したいなと思ったんです。

あくまで、お客様の思いを大切にしたい、と。今年でサロンオープンから5年だそうですが、他の着付け教室と比べて特長はどんなところですか?
うちの場合はマンションの一室でやっていますので、一度に教えられるのは3人ぐらいで、だいたいマンツーマン指導なんですね。よその教室から来られる方も結構いらっしゃるんですが、そういう方は一度に何十人も教える教室だと分かりにくいと。
最終的にはキレイに着られればいいんですけれども、私の中では着付けの段階も流れるように美しく着たいなっていうのがあるんですね。着付けしている姿が美しかったり、流れがあると時間もあまりかからないですし。あと、結流は紐を使うシンプルな着方で、特別な道具は一切使いません。結流の「結」という言葉には、着物は結ぶ文化だという思いを込めているんです。臨機応変にいろんな着方ができるのが、紐のすごいところですね。

そのほうが新しく始める方も買いそろえる必要がなくて、負担が少ないですね。お母さん・おばあさんから受け継いだ道具がそのまま使えそうです。
そうなんです。新しく始める方は「道具を買わなきゃいけないんじゃないか」とか「教室で着物を買わされるんじゃないか」とか、不安を持っている方がすごく多いんですね。でも、私はそういうことよりも、日本人として自分で着付けをできる方が増えるといいな、という感覚なんです。なにも毎日着物で過ごすっていうんじゃなくて、美術館に行く時、音楽会に行く時、ちょっとしたお出かけの時に着てもらえるといいなと思います。

最近はお手入れが簡単な着物も増えていますし、だいぶハードルは下がっている感じはありますよね。
ポリエステルでも最近は良いものが増えてゴワゴワしないですし、うちでも普段気軽に着られる綿の着物や帯をオリジナルで作っています。ちょっと汚れただけですぐシミ抜きしなきゃ、って神経質になるのじゃなく、楽しんで着てもらえるものも多いですよ。

着付けに関してはどうでしょうか。不器用だと難しいのかな、とつい思ってしまいますが。
大切なのは「着たい」という気持ちだと思うんです。本当に紐も結べなかったのに一生懸命「絶対に着たい」という思いで頑張ったところ、わりと短期間で着られるようになった方もいます。

マンツーマンだと、できないところや難しいところを集中的に練習できるメリットもありそうですね。
短期間で頑張る方もいらっしゃいますし、逆にゆっくり楽しみながらマスターしていかれる方もいらっしゃいます。うちは臨機応変に生徒さんの予定に合わせていますから。

通っていらっしゃる生徒さんは、おいくつぐらいの方が多いですか?
30代〜50代くらいですね。多いのが「祖母の着物が家にあって、もったいないから着てみたい」、「ファッションとして着物に興味がある」という方ですね。

確かに着物ファッションって、自由になりつつありますよね。
フォーマルなお着物は確かに決まり事もありますが、普段着る着物は本当に自由です。例えば半襟の部分にレースを使ったり、帯留めもアクセサリーを使ったり、皆さんすごく自由に楽しんでいらっしゃいます。

最後になりますが、今後の目標として考えていらっしゃることはありますか?
着物を着られる人を増やしていきたいっていうことと、やはり固定概念みたいなものがどうしてもあるので、洋服地で着物や帯を作って、気軽に着られるものを提案していきたいですね。着物のことを知らない方から、長く着物とお付き合いされている方まで、いろんな方に着物の楽しさ・良さを伝えていけたらと思っています。知識だけを詰め込むんじゃなくて、日常生活の中で楽しんでもらえる着方を、たくさんの方に知っていただきたいですね。

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サロンには、西方さんがセレクトした着物や帯、道具類がずらり。洋服感覚でコーディネートを楽しめる帯には、取材に伺った女性スタッフが釘付け!お手入れがしやすい素材なのもうれしいところ。

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レッスンは和気あいあいとした雰囲気。笑顔の絶えない雰囲気のなかで、着物のイロハが学べます。着付け教室だけでなく、呉服店だけでもないのが、ここ「サロン」の良さ。長く通っている生徒さんには、希望に応じて浴衣の仕立て方を教えるなど、より深く着物について学べるのも魅力です。

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