mirea 街を彩る ヒト・モノ・コトをつなぐ[ミレア]

「北鎌倉たからの庭」主宰 島津克代子さん

「季節や自然を感じながら丁寧に暮らす。
それが鎌倉や古民家の魅力だと思います」。

豊かな自然に囲まれ、町のあちこちに静かに降り積もった歴史を感じさせる鎌倉。その魅力に引き寄せられて移り住んだ島津克代子さんが、古民家と若い世代を結ぶ活動を始めたのがおよそ15年前のこと。現在はおもに北鎌倉にあるシェアアトリエハウス「たからの庭」でさまざまなジャンルの作り手をサポートする活動に力を注いでいる
この「たからの庭」とは、鎌倉五山第4位の禅宗寺院・浄智寺の敷地内に残る古い建物を島津さんらが再生したところ。ここを拠点に陶芸や和菓子、料理、日本画などの作家約60人が活動し、同時に古民家の管理にも携わるという新たな形のコミュニティーだ。「月に1回ほど草刈りなどの活動に参加していただくことで作家さん同士が仲良くなり、自主的にコラボイベントを企画するなど活動の幅も広がっています。作家のパワーと『たからの庭』の魅力が合体することで発信力が高まるのかもしれません。作家さんが気持ち良く活動し、ワークショップなどに来てくださった方も日頃の疲れを癒したり、幸せを感じたりできたら理想かなと思っています」。まだまだ続く古民家トーク、続きはWebでどうぞ。

【profile】
静岡県出身。大学入学と同時に上京し、卒業後はテレビ番組の制作やテーマパークの企画など主にマスコミ業界で活躍する。たまたま訪れた鎌倉の魅力に惹かれ移住。借り手と貸し手を結ぶ「鎌倉古民家バンク」を設立する。現在は「たからの庭」を中心に、古民家を活用する活動に力を注いでいる。

「たからの庭」でくつろぐ島津さん。「ここにいると人工の音がしないんです。のんびりしに来て、風の音や鳥の声に耳を傾けていただきたいですね」

敷地内には陶芸体験できる「たからの窯」がある。落ち葉を拾ってモチーフにすれば、世界で一つだけの作品に

浄智寺奥の敷地内にあった古民家は、島津さんたちが壁を塗ったり、畳を変えたりしてリフォーム。古い部分は可能な限り残し、和の暮らしを体験できる空間になっている

ギャラリーでは地元を中心に活動する作家たちの作品を展示し、販売もしている

島津克代子さんインタビュー
まずは、古民家に関心をお持ちになったきっかけを教えていただけますでしょうか。
「20年以上前、夫と二人でふらっと鎌倉に遊びに来たんです。それで『住むならこういう場所がいいよね』ということになって、その日のうちに不動産屋さんに行って古い家を借りて住み始めたんです。そのあと、子どもが生まれたり仕事のこともあったりして東京に戻ったんですが、やはり鎌倉がいいねという話になって、自分たちの家を建てて戻ってきました。
鎌倉のどこが好きなのかを考えた時、歴史や文化があるのはもちろん、町の佇まいがすごく好きだったんですね。路地があって、その奥に古い家がある。車は入ってこなくて近所の人しか通らない。でも、そういう鎌倉の風情が目に見えて減っていくことがとても悲しかった。それで、できることを自分たちの身の回りから始めたんです」

その活動ですが、最初はどんなことからスタートされたのでしょうか。
「当時はまだ、古民家に価値があるということを大家さんたちがわかっていなかったんです。あんな古くて汚い家、誰も借りてくれないという意識がありました。その一方で20、30代の若い人は古民家がいいと思い始めていた。その間をつなぐことができるかなと考え、鎌倉古民家バンクをネット上で立ち上げました」

古民家のオーナーとは、どんなふうにつながりを深めていったのですか?
「鎌倉市と一緒にワークショップをやったりするうちに、少しずつ繋がりができていきました。それで、活用したいと言う人を探す手伝いを始めて、リフォームする時には『ここをこうしたらいい、こう直したらいい』というアドバイスなどもしてきました」

古民家ならではのリフォームの大変さもありそうですね。
「オーナーさんが不動産業者に古い物件を持っていくと、『古い家を壊して更地で売った方が高く売れるから壊しましょう』という話になりがちなんです。それで『古いからこそ価値がある』という話を大家さんにしたいと思い、我々が不動産業免許も取得して活動を始めました。今は古民家の価値が浸透して、壊さずにできるだけ活用するという不動産屋さんも多くなりましたし、また活用したいという人も増えて、いい循環ができるようになってきています。
それで私たちは、古民家を活用したシェアアトリエやシェアハウスといったソフト面の運営に力を注ぐようになりました」

それで今、取り組まれているのが、この「北鎌倉 たからの庭」なんですね。
「はい。鎌倉や、古い和の暮らし方のイメージを伝えていく』というのが今の仕事だと思っています。『たからの庭』に来た方に、鎌倉っていいな、古いものを残していきたいな、という思いが伝わって、だんだん自分たちも古い民家を借りてみようとか、身の回りの緑を残していこうとか、そういう動きが広がっていくきっかけになればいいなと思っています」

和の暮らしの良さというのは、具体的にどんなところでしょうか。
「いざ古民家に暮らしてみると、思わぬところが壊れたり、冷暖房が効かなかったり手間がかかります(笑)。やせ我慢をしながら暮らさないといけないんですけれど、手間をかけながら暮らすというライフスタイルが魅力ではないでしょうか。やせ我慢をして暮らすということは、生活と向き合わざるをえないんです。季節と一緒に暮らさなくてはいけない。そういうところが魅力ですし、ゆとりだと思います」

家や暮らしに時間を割かざるをえないのが、ゆとりにつながると。
「突然雨戸がはずれたりとか、そういうトラブルもありますのでね(笑)、壊れてしまっても直せるゆとりがないと大変です。そのゆとりのある暮らしをすること自体が魅力ではないでしょうか。自分が手間ひまかけた空間では、コンビニで買ってきたおにぎりとペットボトルのお茶では詫びしいなと感じますよね。じゃあ市場へ行って買い物してこようとか、生活のリズム自体が緩やかになっていく。それが魅力。魅力というのもやせ我慢ですが(笑)」

『たからの庭』についてもう少し伺いたいのですが、そもそものはじめは島津さんたちがリフォームされたのですか?
「『たからの庭』は禅寺の浄智寺さんが大家さんで、こういうところがあるんだけれど……とご案内いただいたときは、草が背丈よりも茂っていました。建物のデザインはとてもきれいでしたので建具などはほぼ変えず、床板を張り替えたり壁を塗ったりという作業をしました。古い建物ですので、今日はドアが開けないとか、雨が続くとカビが生えるとか、最初1、2年目は勝手が分からず苦労しました。山を背負っていて山から湿気が来るので、建物を締め切っておくと1日で畳にカビが生えてしまったんですよ」

最初からシェアアトリエにしようとお考えだったんですか?
「そうです。当時はシェアという発想自体があまり認知されていませんでしたが。今はいろんな作家さんが拠点にされていて、会員としてお掃除や維持管理にも責任を負っていただいています。現在は会員が60人ぐらいですね。みんなで『たからの庭』を大切にして、その価値観をもとに活動してくださっています」

庭から作品が生まれると楽しいでしょうね。
「ここにいると、四季をすごく感じるんです。和菓子のゆず餅を作る講座では、この山で採れた柚子を使います。ここに拠点があるから、季節のものを作っても嘘にならないと感じます。精進料理やお茶なども禅宗に元がありますから、禅のお寺の敷地で体験できると格別ですよね。自然と共にある豊かさを感じることが今の日本では難しいので、『たからの庭』ではそこを感じていただきたいですね。私たちが一番こだわっているところです」

最後になりますが、今後思い描いている夢や目標がありましたら教えていただけますでしょうか。
「競争しなければいけなかったり、ギスギスしたりする場所が多い世の中で、ホッとできる場所であり続けたいなと思っています。『たからの庭』だけでなく、鎌倉もそういう場所なのかなと感じるんです。鎌倉も今どんどん変わりつつあって、観光の方も増えているんですけれども、他とは違う良さを失わないようにしてほしいなという思いがあります。一つの象徴的な場所として、『たからの庭』が機能してくれるといいなと考えています」

北鎌倉たからの庭

北鎌倉駅から徒歩約10分の浄智寺谷戸にある築75年余の古民家です。かつては陶芸工房として賑わった場所で、庭には薪で焚く陶芸窯も残っています。和菓子づくり、陶芸体験、煎茶講座、ヨガ、星空観察、植物観察、料理教室など、鎌倉らしさを感じられるワークショップやお教室を多数開催しています。鳥の声と緑の木々に包まれたスペースで、日常を忘れたひと時をお楽しみください。
鎌倉らしい、「和」のこと、「自然」のことにこだわったプログラムを開催しています。併設のたからの庭ギャラリーでは、こちらを拠点に活動する作家たちの作品(陶器、雑貨、小物、アクセサリーなど)を販売。北鎌倉燻煙工房のスモークチーズやナッツも扱っています。

  • ショップ・スポット名
    北鎌倉たからの庭
  • 住所
    鎌倉市山ノ内1418-ロ
  • 電話
    0467-25-5742
  • 営業時間
    たからの庭ギャラリー 月・火・水・金 10:30〜14:30/土・日 10:30〜16:00

マップ

関連記事

  • 見た目きゅうり、食感ナス!? 淡泊な味わいの夏野菜

  • 森田 朋子さんのフラワーアレンジメント

  • 鶴見駅前で見つけた!バリリゾートを思わせるリノベ部屋

  • さえぎるもののない一面の海を眺めながら、心身ともにリラックス!