mirea 街を彩る ヒト・モノ・コトをつなぐ[ミレア]

アート
2020.01.01

舘形比呂一のDanceable LIFE Vol.7

ミュージカルとの出会い
舘形比呂一(役者・ダンサー・振付家)

 

ミュージカルは好きです。
いつから興味があったのか考えてみたところ、子供の頃にミュージカルの舞台を観たことを思い出しました。内容は覚えていないのですが、そのあと友達と“ミュージカルごっこ”をやっていたようなので、よほど面白かったのでしょう。その後、高校時代には文化祭で“ミュージカルもどき”をやったこともあります。
本格的にはじめたのは、大学に入って「ミュージカル研究会」に入部したことがきっかけです。そこで出会った先輩に「あなたは踊りをやった方がいい」と声をかけていただき、名倉ジャズダンススタジオの門をたたきました。背の高さが幸いしたのか、在学中から踊りの仕事をいただけるようになり、大学生活の後半は踊り三昧の日々を送っていた気がします。


その頃の日本のミュージカルは、ダンスと歌の“役割分担”みたいなものがあったので、踊りができればアンサンブル・ダンサーとしてミュージカルの舞台に立つことができたんです。最近のミュージカルは歌が中心なので、きちんと歌えないと舞台に立つことが難しくなったと感じます。

ちなみに、在学中はミュージカル研究会の活動も続けていたので、ダンサーとしての仕事と大学での授業、クラブ活動などで大忙しの日々を過ごしていました。あまりの忙しさに記憶がぽっかり抜けている時期もあります。でも、大学4年間に出会った方々や経験はとても大きく、今の自分の下地になっている事は確かです。

ミュージカルには、ある種の“魔法”があると思っています。よく言われることかもしれませんが、ストレートの芝居だと「ちょっと不自然なのでは?」と思うことでも、歌にして歌ったり、踊りで表現することで、軽々と異次元へ飛ぶことができる。細かい説明を省略しても許されて、音楽と一緒に違う世界へ飛んで行ける自由さ、面白さがあると思っています。
ミュージカルの歌や踊りには、ストレートな芝居にはない不思議な“力”がある。ショーダンスにも歌と踊りがありますが、それとはまたちょっと違う気がします。ストレートな芝居も好きですが、そこに歌と踊りが共存する世界にも素晴らしい魅力を感じますね。
若い頃に初めて観た本格的なミュージカルは、劇団四季の『コーラスライン』や『キャッツ』です。
本場ブロードウェイの舞台を輸入して、専用の劇場をつくり、何年間と言う長いスパンで作品を上演するなんてことは、当時としては前例のないことでした。
僕はちょうど本格的に踊りを始めた頃だったので、自分がプロの踊り手になるなんて考えもしなかったのですが、それを良い意味で覆してくれたのが、劇団四季のロングラン公演です。踊る事だけで生活を成り立たせる事がまだまだ厳しかった時代に、ひとつの作品で長期間舞台に立ち続けることができるロングランシステムは、それまでの日本にはない、とても画期的なシステムでした。なので、四季のオーディションがある日は、力ある先輩ダンサーの方々はこぞって受けに行ったので、スタジオから人影が消えてしまったほどです。もっとも、その頃の僕はまだ駆け出しだったので門外漢でした(笑)。

アンサンブルとして立った舞台で印象に残っているのは『ガイズ・アンド・ドールズ』(1993年・日生劇場)です。宝塚歌劇団のラインナップとして知られていますが、僕が出演したのは東宝製作の舞台で、主演は田原俊彦さん。名倉先生が振付を担当した縁で出演したのですが、周りのアンサンブルはダンス仲間ばかり。田原さんがみんなを食事に連れて行ってくれたり、自宅でパーティを開いてくださったり、とにかく楽しかったですね。

とはいえ、僕はアンサンブルの一人だったので、セリフもなく、マイクも与えられません。舞台に立つほどに、セリフが欲しい、歌が歌えたらいいな、という思いが募っていきました。

こうして振り返ってみると、役名のある役がいただけて、自分の楽曲をいただいて歌える現在は、なんと幸せなことだと思います。

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