mirea 街を彩る ヒト・モノ・コトをつなぐ[ミレア]

「タダだから人気というわけではないんです」。

野毛山動物園
鈴木 浩 園長

桜木町から坂道を登っていくと見えてくる野毛山動物園。ゲートをくぐると間もなくかわいらしいレッサーパンダがお出迎えしてくれ、キリン、ライオン、トラなどの姿もすぐ間近に。入場無料でありながら、約100種もの動物を見られるのは感激の一言に尽きるだろう。鈴木浩園長いわく、野毛山動物園は「小さな子どもが動物園デビューするところ」。人混みでクタクタになるのでなく、のんびり動物を見てネズミやモルモットに触れて、動物を好きになってほしいと語る。
そんな取り組みのひとつが、子どものみならず大人にも大人気のお食事ガイドだ。「運営が横浜市から緑の協会に移管された7年前にスタートし、最初は乗り気でない飼育員もいました。でも『餌をやる時に説明すれば、お客さまにもっと楽しんでもらえる』だろうと。また、お客さまから『この動物はどういう性格ですか』など質問されることもあり、コミュニケーションの場になっていると感じています」。こうした活動のひとつひとつが実を結び、一昨年・昨年と年間入園者は100万人を突破。「今後も、無料だからではなく、楽しいから行こうと言っていただける動物園であり続けたいと思っています」。

《profile》
横浜生まれの横浜育ち。小学校1年生の時、遠足で訪れた野毛山動物園の、インドゾウはま子さんの前で記念写真を撮った思い出があるという。「子どものころは遊園地もあり、観覧車もありました」。高校卒業後、横浜市職員に。金沢動物園園長、ズーラシア副園長を経て、2013年野毛山動物園園長となる。

鈴木 浩 園長

日動物たちを間近に見ている飼育員ならではの話も聞ける「動物たちのお食事タイム」。今日はチンパンジーのガイドを聞いたから、次回はツキノワグマへ…と自然とリピーターになる人も多いとか

ガオーッと勇ましく吠える声が聞こえてきそうなライオン。鈴木園長のアイデアで募金箱になっている。入場無料の野毛山動物園は、温かい善意に支えられているのだ

人気者のキリン・ソラ君。人工飼育で育ち、人懐っこい。柵のそばまで近づいて、首を伸ばしてくることも。目下、お嫁さん募集中だ

鈴木園長インタビュー
まず、園長の目からご覧になった野毛山動物園の特長を教えていただけますでしょうか。
「うちの動物園は小さなお子さんが初めて来る『スタートの動物園』というのがコンセプトですね。トラ、ライオン、キリンなどの動物たちがすぐ近くで見られますし、モルモットやニワトリなど小動物と触れ合える『なかよし広場』も人気です」

たしかにキリンは、長い首をのばすと手で触れそうな近さですよね。
「野毛山動物園で飼育しているソラ君は人工飼育なので人に慣れているんです。ふつう野生動物は人のそばには来ないんですが、ソラ君は人が好きで、人のそばに寄って来るんですね。ソラ君のお父さんとお母さんは相性が非常によくて、ソラ君が7番目の子どもなんですよ。きょうだいたちは金沢動物園にいたり上野動物園にいたり桐生が岡動物園にいたりと、日本全国に散らばっています」

野毛山に今いるキリンはソラ君のみですか?
「そうです。お父さんがおととし、その前の年にお母さんが亡くなってしまいました。人間でいう脳溢血のような形で倒れてしまいました。ああいう大きな動物は倒れてしまうとダメなんですね。座ることができれば、まだなんとかなるんですが……。丸一日助けようとがんばりましたが、残念な結果になってしまいました。今はソラ君だけなので、お嫁さんをもらってあげたいですね」

キリンに限らず、近親交配を避けるために、きょうだいは同じ動物園では育てないのでしょうか?
「(動物の)種によって『調整者』と呼ばれる役割の人たちがいまして、国内の動物園の動物の血統を把握して、例えば『この動物園のキリンは、こちらの動物園に移して繁殖してください』とかアドバイスしてくれるんです。たくさんいる種はきょうだい間での交配は避けていますが、国内で数が少ない種はきょうだい同士でも交配しないと種が続かないものですから、交配することもあります。本当に珍しい動物は海外からもなかなか入ってこないですからね」

難しいものですね。繁殖目的に限らず、動物を移動させる場合は長距離・長時間ですと負担になる心配もありますよね。
「キリンは首を折り曲げたりして移動させると大変なので、一般道路の高さ制限3m80cmまで成長しないうちに移動させることが多いです。キリンに限らず体長2mぐらいの1、2歳のうちに移動させることが一般的ですね」

新しく仲間入りしたミナミコアリクイもこんどの5月で2歳だそうですね。
「ミナミコアリクイはもともと小さいですから、ひょいと抱き抱えて移動することもできます。爪が鋭いので注意が必要ですが、とってもかわいいですよ。今回入ってくるアサヒ君は人工飼育で人に慣れているんです。野毛山動物園でもお客様に生態を見ていただいて、教育普及に役立てていきたいと思っています」

このアサヒ君の獣舎は、世界最高齢のフタコブラクダとして人気者だったツガルさんが暮らしていた場所ですね。
「ツガルさんの面影が非常に強いものですから、新しい獣舎の工事が始まった時に『何をするんだ』とご批判の声もありました。ツガルさんが亡くなってからも誕生日にはリンゴや花が届いたりしているんです。世界最高齢になりましたから、ご高齢の方はご自身に重ね合わせて見ていらした方も多いようです。フタコブラクダという種を越えて、『ツガルさん』という個体が人気だったんですね。亡くなったお知らせをした時も記帳の列が続いて、5冊があっという間になくなり、最終的には40冊以上にもなりました。これだけ記帳が集まったのはツガルさんだけでした」

フタコブラクダのツガルさんがシンボルというのは、親しみやすい動物園である野毛山らしいという気もします。
「以前ははま子さんというゾウがスターで、はま子さんがいなくなったあとにツガルさんに注目が集まりはじめたように思います。まず国内で最高齢になって、人間でいうと100歳だよねと。そして世界最高齢になり、長寿ということで表彰されたこともありました。ツガルさんにはなかなかスター性がありましてね、ふだんはグターッとしていてもカメラを持った取材の方がくるとシャキッとするんですね(笑)。まるで大女優のようでした」

晩年になって花開いたという。
「ほんと、人気者になったのはおばあちゃんになってからですね。以前は褥瘡(床ずれ)がひどかったのですが、ある団体からコエンザイムQ10を寄付していただきまして、試しにエサに混ぜて飲ませてみたら、キレイになくなったということもありました」

リピーターの多さが
年間入場者100万人突破という数字に

実際に来てみると、ほんわかとした雰囲気があって、リラックスして楽しめるのが野毛山動物園の良さだと感じますね。
「うちの動物園は無料ですが、いくらタダでもつまらなかったらお客様は来てくれないと思うんですね。桜木町から坂をのぼってわざわざ来てくださる、それも何度も来てくださるというのは、やはり楽しんでくださっているからじゃないかなと思います。入園者も、ズーラシアができた頃は一時35万人まで落ち込んだこともありましたが、徐々に盛り返して、昨年度は久しぶりに100万人を突破しました」

動物園で楽しく過ごした思い出が、特にお子さんにはずっと残るんでしょうね。
「私、閉園の時に門のところでお見送りするんですが、野毛山動物園はお客様が『楽しかったね。また来ようね』と言ってくださることがとても多いんです。それを聞くと、ああいい動物園だなと思うんですね。うちの良さは『無料』ということだけではないんだと改めて感じます」

鈴木園長ご自身、着任なさった時にイメージしていた理想の動物園像はありますか?
「私はもともと横浜市の職員で、休職派遣という形で野毛山動物園へ異動してきたんですね。動物とは全く関わりのない事務職だったこともあり、正直なところ最初は大きなビジョンを持っていたわけではありませんでした。園の運営をきちんとやって、楽しんでもらえる動物園にしようということをまずは心がけていました。その後、金沢動物園へ園長として異動したのですが、ここは動物の数もそれほど多くないですし、入園者の数も30万人そこそこと中途半端な位置づけ。なんとか特長を出さないといけないと思いまして、伊豆から河津桜を10本もらってきて園内に植えました。ご存知のように河津桜は2月に満開になり、ソメイヨシノより少し開花が早いんですね。2月は動物園の閑散期ということもありまして、河津桜が咲けばお客様が来てくれるだろうと。とにかく入園者を増やすにはどうすればいいかということを考えていました。
そのあと、ズーラシアで1年間副園長をやり、再び野毛山へ今度は園長として戻ってきました。就任した時、目指していたのは年間入園者100万人を突破することです。ことあるごとに職員にも「目指せ、100万人」と言っていたのですが、言い過ぎてしまったのか着任の年は前年の入園者を下回ってしまいまして(笑)。これは言い過ぎてはいけないんだなと思い(笑)、それからはあまり言わないようにして翌年は無事に目標を達成しました」

この100万人という数字は、リピーターの多さの証拠なのかなと感じます。
「そうですね。もともと市が運営する動物園だったわけですが、横浜市緑の協会の運営に変わった時、競争で勝ち抜いていくために何かやらなくちゃいけないと。それで7年前に始まったのが、動物たちのお食事ガイドなんです。はじめは『面倒だ』という声もありましたが、みんなの話し合いで「いや、そうじゃない。動物に餌をあげる時に説明すれば、お客さんにもっと楽しんでもらえるだろう」ということになったわけです。お食事ガイドがスタートした当時は飼育員も不慣れで、わかりにくい専門用語を使ってしまうこともありましたが、みんなで自発的にはじめた取り組みですから、それぞれ他の飼育員のガイドを見たりして勉強するわけです。それでどんどん改善していって、今のような形になりました。
また、お客様から『この動物はどういう性格なんですか』とか質問のくることもあり、コミュニケーションの場になっているとも感じています。『今日はチンパンジーのお食事ガイドを聞いたから、次回はツキノワグマに行ってみようか』とお客様にとっても楽しみになって、リピーターが増える要因になっているのではないかと見ています」

最後に、鈴木園長が今思い描く野毛山動物園の未来図を教えていただけますでしょうか。
「小さいお子さんが動物園デビューする場ですから、今のまま小さいお子さんに喜んでもらえる動物園であり続けてほしいと思っています。野毛山動物園で動物に触れて、動物を好きになって、さらに金沢動物園やズーラシアにも足を運んでもらえるとうれしいですね。せっかく来てくれた子どもたちに『つまらなかった』、『動物園なんてもうイヤだ』ではなくて、『もっといろんな動物を見てみたいな』と思ってもらいたいと、私だけでなく職員一同願っております」

野毛山動物園

野毛山動物園は現在、「誰もが気軽に訪れ、憩い、癒される動物園 小さな子どもが初めて動物に出会い、ふれあい、命を感じる動物園」をコンセプトとして、”動物への理解を深めていただく入り口”として役割を担っております。

  • ショップ・スポット名
    野毛山動物園
  • 住所
    横浜市西区老松町63-10
  • 電話
    045-231-1307
  • 営業時間
    午前9時30分から午後4時30分(入園は午後4時まで) 定休日:毎週月曜日(祝日にあたる場合は、翌日)、12月29日〜1月1日 ※5・10月は無休です。
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